第1話――無知な僕は何を手にするか
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……コハク………」
呟いた咄嗟に胸がポカポカと暖かくなる感覚がした。
くすぐったいようなそんな感覚だ。
けれど、何か違うな、と感じた。
だからもう一度呟く。
「ナナシ・コハク」
「気に入らなかったか?」
違和感を考えていたナナシの姿が名を気に入らなかったのだろうと青髪の少年は申し訳なさそうに訊いた。
「違うよ……ナナシ・コハク……そうだ。
コハク・ナナシ。
僕の名前はコハク・ナナシ」
どうやら、違和感は順番だったらしく、違和感が解消されると嬉しそうにコハクは満天の笑みをみせた。
そんなコハクに青髪の少年は気恥ずかしかったのか照れた笑みを浮かべながら言った。
「はじめまして。
俺は、ジェラール・フェルナンデス」
「よろしくね。ジェラール」
「よろしくな。コハク」
二人は共に笑いあった。
監獄のような島で見ることのできない綺麗で純粋な笑みだった。
数日の時がたった。
その間コハク達は昼は奴隷のように、建設の手伝いをさせられ、夜はジェラールや痩せ細り、手入れのされてない白髪ばかりの長髪をしたロブおじいちゃんと呼ばれる老人や、他の大人達から外のことを教えてもらっていた。
記憶がないコハクにとってロブ達が教えてくれることは摩訶不思議なことばかりであり、とても楽しそうに聞いていた。
「ねこ?」
「そうだよ。ちょっと尖った耳に長い尻尾に髭があって4つの足で歩く小さくて可愛らしい動物なんだ」
コハクは猫を想像してみるがどれも珍妙なモノばかりで上手く思い浮かべることが出来なかった。
少し悲しく思ったが、それでも、話への好奇心が勝り、楽しそうに顔を輝かせロブへと質問する。
「思い出せないや。ねぇねぇ。ねこってしゃべるの?」
「喋らないよ。みゃーって鳴くんだよ」
「じゃあ、空を飛ぶの?」
「あはは。猫には羽がないから飛べないんだよ」
「えー。きっと猫だって空を飛びたいと思ってるのに……」
「そうだね。きっと猫だって飛びたいと思ってるだろうね」
「コハクも空を飛びたいのか?」
静かにロブとコハクの話を聞いていたジェラールはふと、思ったことを訊いた。
「うん。だって面白そうだもん。
雲の上に乗れたら気持ち良さそうだし……」
昼間に見上げた空に浮かぶ白い塊の上でジェラールやロブと一緒に寝転がる自分を想像してみると楽しい気持ちが込み上げてきて楽しそうに笑った。
「だよな」
楽しそうに笑うコハクを優しく見つめるジェラール。
その光景は兄弟という言葉を連想させた。
それからもしばらく3人で喋って――と言ってもロブがコハクやジ
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