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闇物語
コヨミフェイル
013
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 作戦の内容を皆に伝え終えて、取り敢えず千石に家に電話を入れるように言った。すでに時刻は五時に迫っていて、外は暗くなり始めていた。友達を探しに飛び出した中学生の娘がこの時間になっても帰って来ないことは親にしてみれば不安でしょうがないだろう。それに加え、一家が蒸発したばかりである。状況が状況であるから、家に帰らせることはできないが、無事を知らせることだけでもさせるべきだろう。
 千石はそれに同意したものの家を飛び出して来たために携帯を持っておらず、一階にある電話を貸すことになった。
 千石が部屋を出ると、それを追うように月火が部屋を出た。しばらくここにいることとなるであろう千石と神原にお茶とそのお茶請けとして茶菓子を持ってくるとのことだった。真実をほぼすべて打ち明けられてすっきりしたのか、それともふっきれたのか、気を利かせられるほどに平常心を取り戻せたのだろう――とは言っても、最も重大な真実は打ち明けていないのだが。
 二人が階段を下りて行くのを見送ってベッドに横になっている神原に向き直った。生々しい内出血は貸したパーカーで完全に見えなくなっていたが、痛むのか時折呻いていた。心配を掛けまいと、呻きすら押し殺そうとしているようだったが、抑え切れずに漏れていた。その姿に自戒の念が沸き上がって当然である。
 「傷を治すから服を捲くってくれ」
 すぐにでも神原を苦痛から解放せんがために言ったのたが、
 「要するに服を脱いでくれということだな、阿良々木先輩」
 神原はいとも簡単に雰囲気を壊してくれた。
 「どう要してもそういうことにはならないだろ!」
 「ふふふっ。そう取り乱すものじゃないぞ、阿良々木先輩。恥ずかしいのは最初のうちだけだから心配は無用だ」
 「それについては心配は全く無用ではないが、それよりもお前の将来の方がよっぽど心配だよ!!」
 神原がこのまま社会人になったら悲惨だぞ!!ていうか、果たして社会人になれるのか!
 「阿良々木先輩が心配してくれことは私の無上の喜びとするところだ。私にはもう何も心配することはない!」
 「掃いて捨てるほどあるだろ!」
 「何?なら仕方あるまい。ここで情交を結び、既成事実を作って私が阿良々木先輩の妻になればいい。それで万事丸く収まるだろう?」
 「すべて丸く収まるどころか、崩壊してしまうわ!」
 主に僕の人生が!!
 まず羽川とか八九寺に見放されて親から勘当された揚句に戦場ヶ原に消されるのが目に見えている。そんな未来に立ち向かえるほどに僕は勇敢ではない。
 「冗談はここまでにして、どこを怪我してるんだ?」
 「胸部と臀部と恥部だぞ。ここで恥部を陰部と置き換えてもいいぞ」
 「置き換えてもいいぞじゃねえよ!変わらねえよ!!後見え見えな嘘をつくな!!」
 それとそんなはしたない言葉を口に
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