コヨミフェイル
013
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た血を痣の広がった脛に垂らした。その血は神原のからだに染み込むようにして消えていく。そして、あらわになった肌からは痣が跡形もなく消えていた。気付けば、曲がっていた脛も元通りになっていた。
「突然精神分裂症にでもかかったと思ったぞ、阿良々木先輩」
まあ、いきなりリストカットだもんな。確かに端から見れば、挙動不審過ぎるか。
「大は小を兼ねると言うだろ?適切量なんか知らなかったし、取り敢えず沢山掛ければ治るだろうと思ってさ」
「それでも他に方法はあったんじゃないか?阿良々木先輩に苦痛を味わってまで私の怪我を治してほしくない」
「その気持ちは嬉しいが、治さないといけないだろ?病院行くにも、何があるかわからないし」
「いや、私は病院云々のことを言っているのではない、阿良々木先輩。私は苦痛を伴わない出血をすればいいのではないかと言いたいのだ」
「あん?」
出血を伴わない苦痛はあっても苦痛を伴わない出血はないだろ。いや、麻酔をすれば成り立つのか。だけどどこでそんな物手に入れるんだ?
「鼻血ではどうだろうか、阿良々木先輩?私が脱げば、すぐに済むではないか」
「えっ?」
いや、僕嫌だし、そんなこと。
ていうか、女の裸を見て鼻血が出るというアニメのような法則が現実でも成り立つのか。
「私は構わないが?」
「それはお前が特殊な嗜好を有するからだろ!」
色んな意味で!
「とにかく、僕の痛みなど気にする必要はない。神原が味わっていたものと比べれば、僕のはたいしたことはない」
「だが――」
「それにこれぐらいの苦痛を味わわないと自分を許せそうにないんだ」
どれほど自分を責めるなと言われても責めてしまうひ弱な性分のせいである。自責の念に耐えることもまた強さであると言うのも頷けるというものである。
「そうか。阿良々木先輩がそう言うのならば、致し方ない」
この話はこれで終わりと言わんばかりに話題を変えた。
「しかし聞いてはいたが、目の当たりにすると、すごいな。外科の歴史をひっくり返すような光景であるはずなのに、まるで日常のひとこまを切り出したような感じだ」
「まあ、確かにな」
血の治癒性にほとんど頼り切ってる僕にとってこの光景は見慣れていて特に驚きはないが、他人からすれば驚くべき事態なのだろう。
「このことを明かせば絶対に研究所で見るに堪えない実験の数々を受けることになるんだろうから、おおっぴらには使えないけどな」
「うーん。こういう使い方ならいけるのではないか?致命傷を負っても勇猛果敢に悪鬼羅刹に立ち向かい、怪我を負った者を自らの血で癒す覆面のヒーローとか」
「負傷者を血で癒すヒーローは斬新すぎるだろ。それにヒーローが活躍するには日本は治安が良すぎるからな」
「確かにそうだ。後自
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