暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
013
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
うな?本当にごめんと思うのならば、阿良々木先輩には少しでも自制心を持ってほしい。これは皆のためであり、阿良々木先輩自身のためなのだぞ」
 「わかったよ」
 いつもはただの変態なのに、どんな危機的状況でもシリアスに成り切れないのにほんの一瞬だけシリアスになるんだよな、こいつ。
 「ちなみに私に対しては自制心どころか理性を保つ必要はないぞ。阿良々木先輩のすべてを受け止めることができる保証はないが、全力を尽くすつもりでいるから安心してくれていい」
 …………実に素晴らしいほどに一瞬である。シリアスという言葉は神原の辞書には無いのかもしれない。
 「何を言う、阿良々木先輩。私の中にある書物はBL本だけだぞ。辞書に分け与えるスペースなぞない」
 …………辞書すらなかったらしい。
 言語中枢がBLで満杯って腐りすぎてるだろ。
 それはともかくとして、もうそろそろ本気で急ぐ必要があるだろう。
 「さっさと、治すぞ」
 まず下腿骨を治すためにジャージのズボンの裾をそっとまくった。
 「うっ……」
 あらわとなった脛を見て少し引いてしまった。
 そっと裾を捲くったつもりだったが、足の位置を動かしていたようで、先程まで真っすぐに伸ばされていた脛は途中で歪に曲がっていた。内出血がひどく、曲がっているところを中心にして赤紫の痣が広がっていた。
 その生々しさに思わず嫌悪感を覚えたのだ。病気や怪我から来る死への本能的な恐怖心がそうさせたのだと思いたい。この怪我は僕のせいだと言っても過言ではないのだから。
 「ああ、添え木をせずにここまで来たからな」
 神原が僕の反応に平然と答えた。
 「まさかそのままの状態で逃げたのか!」
 「そうだ。ぶらぶらさせたまま逃げたのだ。激痛のあまり意識が何度も飛びかけたが、何とか辿り着けたんだ。しかし、仕方がないだろ。あの状況で添え木をしている時間なんてなかったんだ」
 「…………っく。さっさと治すぞっ」
 言いたいことはあったがすべて自分に跳ね返ってくることだったので飲み込んで治療に取り掛かった。だが、早く治そうと思い立つも、すぐにどうすればいいかわからず、固まった。この程度の怪我を治すにはどれほどの血が必要なのか、その血はどうやって調達するのか、患部を治すには直接血を流し込む必要があるのではないのかという疑問がふと頭に浮かんだのだ。
 だが、それは一瞬で、目に入った机の上にあったハサミを引ったくるようにして手にとっていた。
 神原が驚きの声を上げたときには僕はハサミの刃を手首に宛てがっていた。次の瞬間に僕は刃を手首にこすりつけるようにしてハサミを引いた。
 「いつっ…………!」
 手首にできた目を懲らしてようやく見えるような赤い線から一拍遅れてどっと血が溢れた。脈打つ度に溢れる血の量が増えた。その流れ出
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ