第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
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手応えは在った。さながら卵の薄皮を引き裂くような手応えと、魚の身を斬るような。
「チッ────!」
《呵、先程の南蛮武士とは違う意味で斬り辛いのう!》
しかし、浅い。その分厚い脂肪から滲む脂が長谷部の刃を滑らせて、致死傷を与え損なわせた。
断ち斬られた、汚汁塗れの右腕がコンクリートの床に落ちる。後僅かに踏み込めれば、止めをさせたのだが。
『グッ────ぎぃぃィィィィィ!』
更に、背後に回られる。刃から逃れようと。しかし、そのイゴーナロクの無防備な背中に50口径弾が撃ち込まれる。セラの放った、“風王の爪牙”に導かれた南部式大型拳銃の。
『っ……中々、ご機嫌な反動じゃんさ!』
『ぎっ、ガァッ!』
放つ、放つ。三発の魔弾は過たず標的へ。体内深く抉り、再生を許さない。悶絶しながら、再びイゴーナロクは姿を消す。今度は二人の背後には現れない。
一瞬の内に訪れた静寂。不気味な程に静穏。抱き抱える涙子を、知らず強く引き寄せた。
「……何処に消えた?」
《ふむ……近くにはおらん。待て、見付けた。左後方、距離二〇〇米!》
悪寒に、急ぎ振り向き見る。そこは、そう────
『ぬ、グッ……グラーキ様……かくなる上は、貴方様の覚醒を』
『ちぃ──あの野郎!』
醜悪な神の、微睡む場所であり。既に携え、開かれた────『T』と刻まれた“グラーキ黙示録”は魔力の渦に。
その高純度な魔力に反応してか。三本の触手の先に着いた邪神の胡乱な眼差しが、イゴーナロクを捉えて。
『贄は、この私めが勤めましょうぞ……喰らえ、喰らえ────“屍毒の神”ィィィィィ!』
呼び掛けに応え、円形に歯が立ち並ぶ邪神の口吻が開かれ────文字通り、『喰らう』。ばつり、と生々しい音を立てて。後には咀嚼音と、嚥下音。
打ち砕けるだけの威力を持つコンテンダーの魔弾も、今からでは間に合わない。虚しく放たれた弾は、今、目覚めの食事を終えた神に向かって。
『─────オ ォ ォ j d w r ォ ォ ォ k g m w p ォ ォ ォ ォ ォ ォ オ !』
「『ッっ─────!!?」』
狂死しそうな程に壮絶な咆哮を上げ、『棘』が弾を打ち砕く。正に雲丹が、身を護る為に棘を一方向に集めるように。戦車程もある巨体、揺らして蠢かせながら。
どろついた三つの眼差しが此方を認める。先程迄とは比べ物にもならない、指向性すらありそうな狂気の瞳。
『最悪だ……『本物』の顕現を、許しちまった』
黄衣の魔導師が、口汚く反吐を吐く。さもありなん、
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