第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
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跳躍するように、速度を上げた鎧武者が『天井から』消えていく。背中の双発の火筒を吹かして。
それを見送り、呟いた彼女。その背後に、立つ影が一つ。
『……やっぱ、あの時殺しとけば良かったかな』
「『後悔先に立たず』だな、セラ?」
『うるせぇやい。援護射撃もしてくんなかったくせにさ!』
“水神クタアト”を携えたレインコートの男、ティトゥス=クロウが。
がなりたてる『妹』に、『兄』は。仄かに笑いながら、その頭をフードごと撫でる
「さぁ、野狐狩りだ。魔の眷属どもを殺すぞ、セラ」
『……ふん』
仮面の娘は表情を読ませぬまま、腕組したままにされるがまま。
………………
…………
……
薄暗がりの路地裏を歩く少年は欠伸と共に、気怠げに髪を掻き上げた。気心の知れた仲間との夜遊び明け、別に学校に行く訳でもない『落第生』だが、飲酒してぐるぐる回る視界では早めに休むしかない。
仲間の二人、ゴリラと忍者から散々に進められて歩いて帰る最中、金髪に染めた彼は────曲がり角で、走ってきた男にぶつかられた。
「っ……てーな、気を付けろ!」
「ひっ、ひぃぃ! ゆ、許してくれ、もう関わらない、関わらないから!」
いつもの通り、威勢良く相手を罵倒する。振り返り見た、其処に……男は、居た。いつもの通り、こちらを見ながら……真面目そうな学生服の少年は、怯えた表情を見せて。
「ゴメンで済めば警備員は要らねぇんだよ! この落とし前、どうつけて────」
「ひっ────ひぃぃ!」
いつもの通りだ、後は少し脅して落第生への恐怖を植え付けるだけだ。他の落第生とは違い、その程度に済ませるのが彼の美徳。
《────覚悟は出来ているな、魔導師》
「──────────」
だから、背後からのその声。己など比較にもならない程に。『殺意』を漲らせた声に、凍り付く。
「あ、ああ……頼む、助けて……」
《…………………》
「死にたくない、死にたくない! ただ、それだけで……本当だ、黙示録も渡す! だから────」
漸く、落第生は悟る。初めからこの二人は、自分など相手にしていない事を。
一気に、心が凍る。それもその筈、背後から迫る者の気配に。重厚な足音、金属の擦れ会う音。気を失いそうな程の圧力に、呼吸すらも出来ずにへたり込む。
無様に尻餅を付き、這いずるように横道に。その目の前を────鎧武者が、アスファルトを踏み砕いて横切る。
そして、銀色に輝く刃金の残光が……『本』を差し出していた学生服の少年の胸に吸い込まれるのを見た。
「か────ひゅ?」
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