第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
く。邪魔すンな、────“悪心影”」
『……ならば、佳し。是非もない。呵呵、詰まらんのう! もうバレたか』
最期に、微笑むように。記憶の端、忘れかけていたモノを。あの、“迷宮蜘蛛”の槍騎士の言葉を思い出して。
『マジも大マジ、糞真面目よ。クトゥルフ神話とは、本人の解釈次第なのだからな』
ゆるりと立ち上がり、体の具合を確かめる。妙に高い視界、そして軍用HMDのように照星や高度計、己の状態が表示されている。
目線を、前に。彼方に蠢く“屍毒の神”の名と、彼我の距離が表示される。その瘴気も悪意も狂気も害意も、今は微風のようなものだ。
(随分と近代的だな、まるで戦闘機パイロットの気分だ)
《しょごすが喰らっておった『駆動鎧』……じゃったか? あれの絡繰を参考にしたのじゃ。時代に合わせた改修工夫という奴じゃな》
(便利なこって。まぁ、使い易くて良いけど)
一人二役を止めて、是非もなく消え果てる。それで良い、後には、血生臭い血風以外には吹かない。
後に残るのは、漆黒の南蛮胴に身を包んだ鎧武者のみであり。まるで、邪悪そのものが凝り固まった竜と見る程に、異形であり。
(征くぞ────“悪心影”!)
《応友よ────!》
刃金に包まれたままに嚆矢は残る残思の全てを代弁しながら、新たに刃を握る。それが、全てだ。
漆黒の鎧、全身に。腰の兇器、傍らに。恐らく、生涯の幸運を使い果たして。
(“人間五十年……下天の内を競ぶれば、夢幻の如くなり”)
《“一度、生を得て”……》
切り開く、自らの末路を。睨み据える眼前の“屍毒の神”、『例え神だろうとこの世に正体を得た』のであれば。
腰に下げた鞘に“長谷部国重”を────戻し|《・》ながら。
《《────“滅せぬものの、在るべきか”!》》
『ならば、必ず殺せる』と、意気を新たに腕を組み。
最早、至近距離に迫った死そのものに対して。
《裏柳生新影流兵法“明身”が崩し……》
燃え盛るような三つの深紅の瞳と、刃金の隙間に蠢くショゴスの血涙を流す無数の瞳を輝かせて────!
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ