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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
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く。邪魔すンな、────“悪心影(あくしんかげ)”」
『……ならば、佳し。是非もない。呵呵(かっか)、詰まらんのう! もうバレたか』

 最期に、微笑むように。記憶の端、忘れかけていたモノを。あの、“迷宮蜘蛛(アイホート)”の槍騎士の言葉を思い出して。

『マジも大マジ、糞真面目よ。クトゥルフ神話とは、()()()()()()()なのだからな』

 ゆるりと立ち上がり、体の具合を確かめる。妙に高い視界、そして軍用HMD(スマートグラス)のように照星(レティクル)や高度計、己の状態が表示されている。
 目線を、前に。彼方に蠢く“屍毒の神(グラーキ)”の名と、彼我の距離が表示される。その瘴気も悪意も狂気も害意も、今は微風のようなものだ。

(随分と近代的だな、まるで戦闘機パイロットの気分だ)
《しょごすが喰らっておった『駆動鎧(らーじうぇぽん)』……じゃったか? あれの絡繰を参考にしたのじゃ。時代に合わせた改修工夫(あっぷでーと)という奴じゃな》
(便利なこって。まぁ、使い易くて良いけど)

 ()()()()を止めて、是非もなく消え果てる。それで良い、後には、血生臭い血風以外には吹かない。
 後に残るのは、漆黒の南蛮胴(なんばんどう)に身を包んだ鎧武者のみであり。まるで、邪悪そのものが凝り固まった竜と見る程に、異形であり。

()くぞ────“悪心影(あくしんかげ)”!)
応友(おうとも)よ────!》

 刃金に包まれたままに嚆矢は残る残思の全てを代弁しながら、新たに刃を握る。それが、全てだ。
 漆黒の鎧、全身に。腰の兇器、傍らに。恐らく、生涯の幸運を使い果たして。

(“人間五十年……下天の内を競ぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)の如くなり”)
《“一度(ひとたび)(しょう)を得て”……》

 切り開く、自らの末路を。睨み据える眼前の“屍毒の神(グラーキ)”、『例え神だろうと()()()()()()()()()』のであれば。
 腰に下げた鞘に“長谷部国重(はせべくにしげ)”を────()()|《・》()()()

《《────“滅せぬものの、在るべきか”!》》

 『ならば、()()()()()』と、意気を新たに腕を組み。
 最早、至近距離に迫った死そのものに対して。

裏柳生新影流兵法(ウラヤギュウシンカゲリュウヒョウホウ)明身(アケミ)”が崩し……》

 燃え盛るような三つの深紅の瞳と、刃金の隙間に蠢くショゴスの血涙を流す無数の瞳を輝かせて────!


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