第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
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この圧倒的な狂気に晒されては。
事実、彼女の隣の男なぞは既に膝を折って、無様にエヅきながら。最早、先に吐き尽くしており胃液すら出ないと言うのに。
「ハァ、ハ……ハッ。神様なンて仰々しく呼ばれてる割にゃア、何て事ァねェ。只の、海産物だろ」
まだ、その心神は生きている。まだ、爛々と殺意を燃やしている。
袖で口を拭いながら立ち上がり、涙子をセラに預けて歩を進める。ただ、真っ直ぐにグラーキを目指して。
《呵呵、しかし敵は名実共に『本物』じゃぞ? 先の“迷宮蜘蛛”や“悪逆涜神”のような『独自解釈』ではなく、のう》
「だから、何だ。知った事か、殺す。アイツは、俺の日常に手ェ出しやがった。その報いを受けさせる、必ず殺す」
足を踏み出す。止まりそうになる足を、挫けそうになる意志を廻す。腐敗した息を吐く邪神への一歩毎に強まる瘴気や害意、狂気や悪意をまともに浴びながら。
長谷部が震えるのは、同化するショゴス……“バルザイの偃月刀”が戦いているからだけではない、嚆矢の身体もまた、震えているからだ。
《莫迦め────死ぬぞ?》
当然だ。あんな化け物を相手にして、無事に済む理由などない。現に、既に精神の何処かが死んだ感覚もある。或いは、其処が恐怖だとか言う分野なのかもしれない。木山春生辺りにでも聞いてみれば面白いかもしれない。檻の中に行けるなら、だが。
否、行くだけなら何時でも出来る。殺人機械たる己なら、何時でも。
《では、儂の────》
「要らねェ、俺自身で、片ァつける」
聞き飽きた台詞を吐かれる前に、話を打ち切る。手持ちは神刻文字と錬金術、祭具“バルザイの偃月刀”と刀“長谷部国重”、脇差“宗易正宗”。
これだけを持ち合わせながら、一つも頼りに出来ない。それだけの圧力が、目の前から。
『─────オ ォ ォ j d w r ォ ォ ォ k g m w p ォ ォ ォ ォ ォ ォ オ !』
「『ッっ────??!」』
壮烈な咆哮と共に、黒い棘が────槍襖が放たれた。投槍の如く、二百メートルの距離を無にする一射。それをセラは跳躍して、身を竦ませた嚆矢は刃を振り降ろし……弾き返され、幸運でそれを躱した。
それが気に食わなかったのだろう、邪神は苛立たしげに。身を丸めるように────巨大な棘の密集する大鉄球と化して、前進を開始し
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