レベルアッパー
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時刻は午前2時。深夜のこの時間のビルの間の路地。人がふだんはいるはずのないこの場所で蓮はとある男と向き合って取引を行っていた。
「じゃあこれですね。このことは一切他言無用でお願いしますよ。」
「おう、わかってる。これがレベルアッパー……」
蓮はにやにやとして音楽データの入ったUSBを見ているその男を気にせずに、炎のブースターで飛び上がった。以前取引の際にお金を払うのを渋って襲い掛かってきた男がいたので面倒事になる前に逃げることにしているのだ。驚く男の顔も一瞬で見えなくなり、蓮はビルの屋上に着地。そこでつけていた仮面を外した。
「この仮面あっついなあ、もう……。さて、今日の取引はこれで終わりだったかな……」
蓮はそう呟き、座り込んで携帯を開いて確認する。先ほどまで蓮がつけていた仮面、これは木山が蓮に渡したものであり、こんなものの取引をしている以上は顔を見られてはよくないという配慮で顔を隠すためのものであり、ボイスチェンジャーまでついている優れものである。
「よしっ、今日の仕事はこれで終わりっと。疲れた……」
確認を終え、蓮はつかれた体を無理やり動かして炎を使ってビルを飛び移って移動を開始する。向かうは我が家。蓮だって学生であり、授業があることを考えれば早く寝たいところなのだ。
「ふわぁぁぁぁ……ってあぶね……!?」
眠気によってふらふらしているために足を滑らせながらも蓮はいそいで帰って行った。
蓮が木山の手伝いとしてレベルアッパーの取引を始めてから数日たった。最初は複雑な気持ちだった蓮も副作用もなく、特に使用者にデメリットはないという木山の言葉を信じて今では慣れてきたこともあり、淡々と取引を行っていた。だが、基本的には取引は夕方から夜中。となると当然、
「すぅ……すぅ……」
「神谷!神谷!!……ったく……ここまで呼んで起きないか、ふつう……」
こうなる。授業中に爆睡している蓮に声をかけ、軽く頭を叩いた先生もあきれてあきらめる。そんな蓮を苦笑いでクラスメイトが見つめる中、佐天も蓮の方をみてから視線を前の席に向ける。そこにいつも座っているはずの頭にたくさんの花をつけた少女は今日はいない。
「もうきにしないで続けるぞ……。パーソナルリアリティ、自分だけの現実は能力を……」
授業の続きに入った先生の言葉を聞き流し、佐天は先ほどの電話の内容を思い出す。風邪だと言っていた初春の声はそこまで辛そうではなかったがいつもの元気はなかったように思える。
(ん〜やっぱ心配だなあ……)
「……天……」
(よし。授業終わったら神谷と松野を誘ってお見舞いに……)
「佐て……佐天!佐天涙子!!」
「え、あ、は、はい!!」
考え事をしていた佐天は呼ばれていたことに気づき、慌て
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