Episode34:モノリス・コード
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に僅かに喜色をその表情に浮かべ、そして男は夜叉に背を向けて走り出した。
もうこんな所にはいられない。どうせ自分はただの下っ端だ。故に逃げ出しても組織にバレることはないだろう。ただ今は、すぐ近くにある恐怖から逃れるのが先決。
「そうだね。俺は、アンタに干渉しないよ」
直後、夜叉の背後から打ち出された雷光が、背を向けて逃げる男の脳天を貫いた。衝撃が地面に伝い、そして男は糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏す。恐らくは即死だろう。
「随分時間がかかったわね」
「…まあ、な。だがこれで、奴らの目的がはっきりした」
得意の雷撃で残る一人を感電死させた女性ーーセラは夫の見せる表情に溜息をつく。
そんな辛そうな顔をするならば、こんな事やめて全て軍に任せてしまえばいいのに。しかし彼は、この国の為ならばと、退役した今でさえも蒼夜叉として危険の芽を摘み続けている。
「…それで、何か分かったの?」
ならば自分は傍にいてこの人を支え続けなければならない。愛するこの人が、全てをくれたこの人が壊れてしまわないように。
「ああ」
静寂が戻った街に、冷たい風が吹き抜ける。
「…近々、戦争が起こる」
荒れ果てた街並みを、細められた深紅の眼が睥睨していた。
☆★☆★
「んぁーっ! よく寝た!」
「九十九、緊張してるからってわざと大声を出さないでくれ」
「なんか最近森崎君、俺に冷たくない?」
隼人が仮眠から復活を遂げて一時間。そろそろモノリス・コードの試合が始まるということで、隼人含めたチームメンバーは試合会場に立っていた。
最初の相手は六高。そして岩場ステージに決定しているようだ。
岩場ステージは、平原ステージに続いて遮蔽物のないステージである。故にこそ、求められるのは選手自身の技能と知恵。地力で勝っている方が、この試合を制する。
「ん、呼ばれた。じゃね皆、行ってくるよ」
「ああ、頼むぞ」
囮である隼人は他のメンバーとは離れた場所からのスタートとなる。
その為、予め係員に招集されランダムで決定されたポイントに向かうのである。
森崎や他のメンバーに手を上げて激励に答えて、隼人は係員の元へ向かった。
(さて、参戦開始まで一切の魔法行使は禁止されてるんだったよな)
公平を期すことを第一としているのか。試合開始の合図から囮がステージに降り立つまでの五分間、彼らは一切の魔法行使を禁止され、そして目隠しをされている。勿論、隼人の世界の心眼も、そのルールに則る。
ついこの間考案した瞳の制御法を実践して、そして隼人は自分の体が勝手に動くのを感じた。
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