Episode34:モノリス・コード
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っと彼は私をその気にさせてしまう事実を知っている。
知りたくない。
私は移り気な人間だ。あの地獄でそう上書きされてしまったから。でもだからこそ、先輩への想いだけは唯一だと決めていたのに。
「お前、のーーー」
ーーああ、心がクロくなっていく
☆★☆★
また、夢を見ていた。
日の光が届かない地下施設。今にも消えそうに点滅する電球の光しかない薄暗い空間に設置されている幾つもある檻、その中の一つに俺はいた。
周りを見れば俺よりも年下の子供が何十人もいる。
その子達に共通するのは、質素な服、こびりついた汚れ、目新しい傷、光を失った瞳、恐ろしく細い腕や脚など。幾つもの共通点があり、それは総じて、この場所が決していい場所ではないことを物語っていた。
ガチャリと音が鳴って檻の入り口が開く。虚ろな目を動かしそちらを見ると、一人の傷だらけの少女がこちらへ放り投げられた。慌ててその子を抱き止める。
本当ならば綺麗に輝く緑がかった銀髪はすすけて汚れ、幼いながらも端正な顔は痛みに歪んで固まっていた。意識を失っているのだろう。この奥で行われているコトで、正気を保っているのは容易な事ではない。
ーーああ、酷く現実味のある夢だなと、俺はどこか遠くで思った。
ーーなんで俺はこの場所を知っているのだろう。分からない。
けど、また、守らなくちゃって思った。俺はこの中で一番年上だから、俺はみんなを守らなくちゃダメだと思った。この中で戦える力を持っているのは俺だけだし、俺はまだ、この子たちよりも酷い事をされていない。
醜くても構わない。この子たちが助かればと、この子たちを守れればと。気づけば俺は傍にあった鉄の柵を握りしめていた。
少女を放り投げた男は訝しげにこちらを見ている。
握りしめた鉄が軋みを上げる。いつからか拳を電気が覆っていて、更に力を込める。あと、少しで鉄柵が外れーーー
「がッ」
意識が飛び掛けた。蹴り飛ばされたのだと認識できたのは少し経って。その時には俺の体は男に持ち上げられていた。
男の口が動く。黄色く変色した汚い歯が覗く。やめろ、俺に近づくな。その汚い顔を俺に近づけるな。
ーー正義のヒーローにでもなったつもりか?
「……ぁぁ」
それ以上、何も言うんじゃねぇ。
ああ醜い。その顔も、酒臭い息も、俺の首を絞めて持ち上げる腕も、だらしなく肥えた腹も、こいつの存在全てが汚い。
その汚い存在が、俺の理想を笑う事は許されない。
その汚い口で、俺の理想を語る事は容認できない。
俺の抱く理想、子供たちを守りたいと思う感情、『僕』の存在意義を、お前如き悪党が軽々しく口にする事は、万死に値する。
「ブッ殺すぞ、クソ
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