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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第17話 解脱
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「い、イロモノ!?」

 再び唯依の心をぐっさりと突き刺して、ぐぎゃっと抉る一言。まさか、そんな風に見られていたとは夢にも思わなかった。
 というか、彼からの評価を聞くたびに自己評価が今までにない勢いで暴落してゆく。オービットダイバーも真っ青になるだろう勢いで。

「もしやと思っていたが、やはり自覚がなかったのか……」

 忠亮が呆れ果てた溜息を吐く。まるで通夜の様に重々しく。
 そこまでか、そこまで珍獣扱いなのか!?そこまで絶望的なのか!?

 内心の混乱により表情を強張らせる唯依だった――――が


「それが嫌なら、もう少し素直になれ。お前はお前だ―――他の誰かになろうとしなくていい。お前のままで良いんだよ。」

 ぽんぽんと幼子をあやす様に、忠亮の残った左腕が唯依の頭に置かれ軽く撫でた。

「もう、勝手なんですから……。」

 頬を若干朱に染めて唯依が唇をちょっとだけ尖らせる。

(オレ)はそういう男だ。性分と諦めろ。」

 自嘲気な笑み―――だが、唯依はその眼差しの裏に一抹の決意と哀愁の混じりあった色を見た。
 そして、それが何なのか説いた質すことが出来なかった。
 理由は自分自身でもよくは分からない。

 ただ、花雲の走る大空を見上げながら春の日差しに溶けて消えて逝く―――独りぼっちの雪うさぎがなぜか連想された。

「あの大尉……一つお願いしてもいいですか?」
「なんだ?」

 忠亮の左手の下で恥ずかしさに震えながら唯依はようやく絞り出した。

「名前で呼んでもいいでしょうか……?」
「ふっ、ずいぶんと可愛らしいお願いだ――――好きに呼べ。」

「はいっ!……忠亮…さん。」

 大したことではない素朴なお願い、それが聞き入られ唯依が破顔する。
 年相応の少女の微笑みだ。
 野花が見る人の心を豊かにするように、彼女の笑みは忠亮の心に色を穏やかな色を齎す。

「そろそろ飯時だ、一緒に食うか?……唯依。」
「あ、じゃあ私は準備をお手伝いしてきます。」

 唯依が嬉しそうに微笑み、それに頷くと彼女は白雪の中庭に足跡を残しながら駆けて往く。
 その山吹の背を見送る忠亮は一人、思いをはせる。

 ―――ああ、守りたいな。
 自分に向けられる無垢なる笑み……それを守るためなら例え世界を敵にしても構わない。
 いや、世界そのものを壊したって構わない。
 この一瞬の心打つ穏やかさをずっと見ていたい。もっと色んな笑顔を見たい。

 心に宿った欲望が燃焼し始める。欲望の熱量は際限なく増大し、増長してゆく。
 守りたいと思えるモノが欲しいという、忠亮のこれまでの人生で膨大に積み重ね凝縮された渇望と融合し、新たな渇望を生み出す。

 刹那よ永遠となれ、時よ
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