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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 齟齬
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込む。そしてワーレン提督が戦闘状態に入るのと時を合わせて総司令官が敵の中枢部を突き左側面に抜ける。まともに艦隊編成さえ出来ていない敵だ、そうなれば混乱せざるを得ない。そこを俺とワーレン提督が全力で攻撃する。混乱から崩壊、敗走になるのは時間の問題だろう。

「閣下、敵が前進を始めました!」
「総司令部より通信! 前進せよとのことです!」
オペレータが声を上げる。艦橋の空気が瞬時にして引き締まった。ヴェーラー参謀長が艦隊に前進を命じる。オペレータ達が艦隊に命令を下し始めた。

総司令官自らの陣頭指揮による一撃離脱戦法か。大胆不敵としか言いようがないが総司令官は少し焦っているのではないだろうか。鮮やかに勝たなければ辺境星域の住民を心服させる事が出来ないと力説していたが……。本心では一日も早くローエングラム侯の本隊に合流したいという気持ちが有るようだ。それが一撃離脱戦法を採らせたのだろう。

「閣下、ワーレン提督より通信が」
オペレータが訝しげな表情をしている。確かに妙だ、敵との接触を前に通信など。何か有ったか?
「スクリーンに映せ」
ワーレン提督がスクリーンに映った。顔が強張っている。良くない兆候だ。

「ワーレン提督、何か有ったかな?」
『ルッツ提督、敵の艦隊だがまともな艦隊編成になっている』
「まともな? また妙な事を……、……馬鹿な!」
一瞬ワーレン提督が何を言っているのか分からなかった。慌ててオペレータ達に確認を命じた。ヴェーラー参謀長、グーテンゾーン中尉も顔が強張っている。

「馬鹿な、それでは……」
『うむ、総司令官閣下の横からの一撃離脱は上手く行かないかもしれない』
ワーレン提督の声が沈痛に響いた。オペレータが敵の艦隊編成に混乱は無いと報告してきた。してやられたか……、どうやら敵に上手く嵌められたらしい。

「総司令官閣下に連絡しよう」
『そうだな、手順を変えなければ』
「ああ、我々が何とか敵を混乱させる、そこを総司令官閣下に突いて貰う」
『うむ、急ごう、時間が無い』
オペレータにキルヒアイス総司令官との間に回線を開くように命じた。落ち着け、戦いはこれからだ、まだ火蓋さえ切られていない……。





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