26:人生の先輩
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それからあたし達は重い足を引きずりつつ、なんとか森の中の安全地帯――約5メートル四方の広さで床に石畳が敷かれ、それぞれの角に松明が灯る石柱が立ち、中央には焚き火が可能な簡素な炉だけがある――に辿りつく事が出来た。
まずは全員その中に入って、それと同時に、脱力の息と共に一斉に床に寝転がった。それにあたし達は顔を合わせ、揃って力ない苦笑の笑い声を漏らした。
それから、まだ全身に残る徒労感を振り払いながら、あたし達女性陣は焚き火を起こして夜食にリゾットを作り始め、男達は身の回りの安全の確認と確保の為に見回りに出た。
あたし達の帰りを待っていたであろうマーブルには、以前にフレンド登録していたのが功を奏し、メッセージで今日は戻れない旨を伝えることができた。返信には……
【帰りが遅いから心配だったけど、みんな無事でなによりね。またみんなと夕食が出来なかったのは残念だけど、キリト君の判断は正しいわ。だけど、明日にはまた戻ってらっしゃい。あと……私が言えることじゃないけれど、死神には、どうか気をつけて。――マーブル】
とあった。それを見たシリカは、微笑みながら目を伏せて「はい、ありがとうございます」と口頭で返事をしていた。
それからキリト達が戻ってきたのは、ちょうどリゾットが煮えてきた頃だった。
「大丈夫、この周辺にはモンスターや他のプレイヤーは居なかった。ただ、休んでいる途中にモンスターがもしかしたらここの傍で再湧出するかもしれないし、死神の事もあるから……決して絶対安全とは言えないけどな」
「ケッ、死神が居るとすりゃあ他所よりもオレらの内の誰かだ、って言いたそうなのがバレバレだぜ」
「よしたまえよ、ゾッとしない話だね」
口々に愚痴りながらもキリト達は、リゾットの香りと湯気に歓声を上げながら焚き火を囲む。
だが……
「……………」
最後尾で戻ってきたユミルだけは、ここと離れた角の石柱に背を預けながら座り込み、曲げた自分の膝を抱いていた。
それを見たアスナが、あたしの耳元に顔を近づけて囁きかけてくる。
「ねぇ、リズ。ユミル君、今日はずっとあの調子だね……。きっと、朝にキリト君が言ってたこと絡み、なんだよね……」
「だろーね……」
キリトは朝にユミルとあったことをあたし達に話していた。
あの子のことは一筋縄ではいかないだろうと前々から思っていたけど……昨夜の喜ばしい事があっても、いや……あったからこそ、今ああやって塞ぎこんでしまっているのを見せ付けられては、暖簾に腕を押しているかのような、不安になる手応えを否応無く感じさせられる。
――だけど……
「まったく、しょうがないわね」
「リズ……?」
あたしはリゾットを皿に
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