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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
26:人生の先輩
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口いっぱいに広がる。
 うん、うまい。

「マーブルさんの受け売りだけど……大丈夫。うん、我ながらビックリのおいしさね! ……調理はアスナ達も一緒だったけど」

 そしてスプーンを皿に戻してユミルへと差し出す。そしてニヤリと笑ってみせる。

「今食べないと、次はきっとアスナとシリカの二人がかりでキミに食事を勧めてくると思うよ? それでも食べられないってんなら、なんなら……あたしがフーフー息で冷ましながら、一口一口あーんって食べさせてあげよっか?」

「…………な」

 この言葉にユミルは数秒硬直した後、ぼっ、と火と付けたかのように顔を赤くして目を丸くした。

「んなっ……ばっ……!?」

 ニヤニヤと再びスプーンへと手を伸ばし始めたあたしの手から、ユミルはそれをお皿ごとひったくった。

「ば、馬鹿なこと言わないで! たっ……食べればいいんでしょ食べれば! 毒は入ってないって分かったしっ? あの二人がまた来るのはイヤだから、仕方なく、ひ……一口だけは食べてあげるよ! し、仕方なくだからね!」

 ……………。

 あー……なんだろう。この感じ。
 あたしが言う権利があるかどうかは分からないけれど。

 ――これ、なんてツンデレだろう?

 めちゃくちゃ可愛い。男の子のクセに。思わず頭を撫で回したくなってしまう。こっそり脳内でひときしり耽溺(たんでき)して悶絶(もんぜつ)する。
 ユミルはそんなあたしの複雑な心境に気付かないままリゾットを一口すくい、口に運びかけたところでチラリとこちらを向いた。

「ちゃ、ちゃんと食べるからさ……見られるのイヤだから、あっち、戻っててくれないかな……?」

 頬を朱に染めて言うその薄い唇は桜貝のようで。
 そこから発せられる羞恥を堪える声すら、あたし達と変わらない高く自然なトーンで。

 …………というか。
 可愛すぎて、逆に少し腹が立ってきた。

「はいはい、分かりましたー」

 と、あたしは素直にその場を立ってぽんぽんとエプロンドレスのスカートをはたいた。

「……あ、そうそう。あとね」

 キリト達のもとへと数歩歩き出してふと、あたしはユミルへと振り返った。ユミルは尚もスプーンの先と睨めっこをしていたが、なにかとこちらへと顔を上げた。

「キミを放っておけなかったのは、単純にあたし達がキミを放っておけないと思ったからよ。キミはたぶん、自分が思っている以上に周りから良く想われてる人間よ、自信を持ちなさい。……マーブルさんも言ってたよ。私はユミルを信じてるって」

 それを聞いたユミルはしばし、なんとも言い難い複雑そうな顔で逡巡していた。そして、

「…………そ」

 と、極めて簡素な返事だけが返ってきた。
 あたしはそ
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