26:人生の先輩
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ていうのは、そういう生き物だからよ」
遥か高くにある空は、大部分が天蓋と霊木の枝で覆われてはいるものの、その僅かな隙間からはしっかりと星々を見て取ることが出来る。
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「人は一人なんかじゃ絶対に生きていけないわ。それは呼吸とか、食事とか……そういうのとはまた別の、人が人として生きていくうえで最低限に必要なものなの。キミだって、あたし達に会うまではソロだったとしても、初心者のころはそうじゃなかったはずだよ。なにより……現実世界でも、キミにも大切な人がいるはず。……あたしにだってもちろんいる。親や友達でしょ、それに――」
「やめてよっ……現実の話をするのは……!」
ユミルは顔をその膝の間に深く埋めた。
小さく震えるその肩を見れば、彼にも親や大切な人がいると伺える。だが今はそれは、この世界、この事件、この話には必要の無いものだった。あたしは素直に謝罪をする。
「ごめん……タブーだったよね。……じゃあさ、ホラ、真ん前のキリト達を見てみなさいよ」
あたしは目の前数メートル先の彼らを見る。すると、隣で顔を上げる気配がした。視界の端にその顔は映らず、表情は伺えない。
ハーラインはリゾットのおかわりを給仕のアスナに頼みながら、何かをにこやかに話しかけており――まずナンパ絡みに違いない――隣のキリトが苦い顔で肘で彼の脇腹を突いていた。アスナも苦笑いで彼の皿を受け取っており、その隣では同じく鍋の中のリゾットを皿によそっていたシリカが恐る恐るデイドへと皿を差し出しており、デイドはムスッとそっぽを向いた顔でそれを手に取っていた。シリカの足元では、小皿に盛られたリゾットをピナがペロペロと舐めるように少しずつついばんでいる。
「……どう? キミと同じ時期にあたし達のパーティに参加したハーライン達も、最初はどうなることかと思ってたけど……今ではああやってあたし達に溶け込んでいるんだよ。それは、あいつらだって、人と傍にいれば交わらずにはいられないから。……デイドなんて、ずっとシリカを目の敵にしてケンカ腰だったたけど、今じゃなんだかんだで照れ隠ししながらおかわり頼んでたし」
「……………」
隣を見てみれば、ユミルはキリト達をどこか羨ましそうに、眩しそうに目を細めて眺めていた。
「なにもべつに、今からキミにあそこに混じって来いって言うわけじゃない。ただ、今あたしが言ったこと、ちょっとでも胸の内に憶えててくれたら嬉しいかな。いつかきっと、意味が分かる時がくるよ。……ホラ、見てて」
その声にユミルはあたしへと向き、あたしはスプーンを取り出してリゾットを一口すくって頬張ってみせた。ハーブの香りと胡椒の刺激が唾液腺を刺激し、しっかりとコンソメと肉汁の旨みを吸ったお粥の風味が
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