26:人生の先輩
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ミルにカッと来て、ついユミルの頭のてっぺんを片手で鷲掴み、こちらに捻りながら怒鳴りつけてしまった。ユミルが珍妙な悲鳴をあげてパチクリとその大きな瞳で、間近にあるあたしの目を驚いた顔で見た。普段はああ見えて、本当に表情の変化が豊かな子だ……と、心のうちで思いながらも、今は言いたい事をユミルの顔に叩きつける。
「ああもうっ! だから、あたしのことはリズって呼びなさい! あたしも、もうキミの事はユミルって呼ぶから!」
「え、えっと……」
「分かった!?」
鼻先が触れそうなくらい顔を詰め寄らせてそう言うと、恐る恐るコクコクと頷きが返ってきた。
今までずっと落ち込んでいたこの子の表情を一気に吹き飛ばせたのは良かったけれど……少し、乱暴だっただろうか。
「ど、どうしたの……。いきなり、なんていうか……フランクになって……」
よく見ると、少し怯えて泣き出しそうなユミルの顔に少し反省し、彼の頭に置いた手を皿に戻しながら、それでもあたしは鼻を鳴らす。
「もともとあたしは堅苦しいの苦手なのっ。……とにかく食べなさいよ、冷めちゃうじゃない」
「言葉遣いも、なんか素になったみたいだね……。ともかく、それでもいらない……キリトから今朝の話、聞いてるんでしょ……?」
「……ん、聞いてる」
ユミルは気まずそうにあたしから顔を逸らして自分の爪先を見つめた。
あたしもキリト達が取り囲む焚き火の揺れ動く火を眺めた。
……あたし自身、今朝の現場に居合わせていなかったから詳細は分からない。けれど、宿でキリトから聞いた話は、この子の傷ついた心境を理解するには充分足りえた。
「……昨夜の事、後悔しているのよね。それでもあたし達を信じきれないから。いつかあたし達が……裏切るかもしれないから」
「分かってるんだったら……」
「だけど、そんなの関係ない。あたしはまた昨日みたいにキミに食べてもらって……また少しだけ、あたし達のことを信じてみて欲しい。それだけのことよ」
その言葉に、ユミルは小さく、肩だけの嘆息をした。
「……勝手だね。キミ達はいつもそうだ。勝手にボクの心の中に、土足で入り込むようにさ……」
そしてその顔を伏せ、曲げた膝の間を見つめる。
「…………なんで、放っておいてくれないかな……」
まるで溢れる涙を堪えるように、心をさらに塞ぎ込もうとする湿った声が届く。
それを横目で見たあたしは、慎重に言葉を選びながら口を開く。
「えっと……あたしは、マーブルさんみたいに大人じゃないし、キミよりたぶん、数年だけ人生の先輩なだけだから、あんまし偉そうな事は言えない。……だけど、大事なことだからよく聞いておきなさい」
あたしは夜空を見上げる。
「――……人っ
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