26:人生の先輩
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た。あたしは構わず、まるでグルメ番組のリポーターさながらに言葉の抑揚に熱を入れた調理解説を続ける。
「こっからが腕の見せ所なんだ。次に水とブイヨン、あと隠し味に少しのコンソメを入れるんだけど、玉葱が蜂蜜色に炒めてきた直後に入れなきゃ美味しくならないんだよね。お水も気持ち分量を多めに入れるの。そしたらふっくらとした炊き上がりになるんだよ。ふつふつと煮えてきたら下味を付けた干肉を入れて、ここで火を弱めてお鍋に蓋をして時間をかけて煮るの。そうすることで、お肉の旨みをじっくり染み渡らせるんだ。そしてお米が炊き上がったら、ひとまず完成。……だけどここで一手間!」
あたしはユミルが左手に持つ皿を注視していることを確認してから、右手でウィンドウを広げる。食材のリストをポン、と次々にクリックして順番に取り替えながらオブジェクト化させていく。
「食べる前に、こうやって……まずは粉末チーズをかけるんだ。……ホラ、とろけてきて美味しそうでしょ? そしてトドメに香辛料のハーブとセージ、荒挽き黒胡椒をを振り掛けることで――」
――くきゅるぅ〜〜
「……〜〜ッ!?」
ユミルの腹の虫が鳴り、慌てて手でお腹を抑えている。きっとフードの下の顔は真っ赤になっていることだろう。
「――と、このように食欲増進効果のある、実にいい香りを演出して、本当に完成です。……よかった、食欲はあるんだね」
「たっ、食べ物で釣るなんで卑怯だよっ! なんでキミ達は昨日の夕食といい、ボクを胃袋から攻めて来るんだよっ!?」
見事に釣られた彼はガバッとあたしを見上げ、勢いよくそうツッコんだ。その勢いでフードがスルリと髪から滑り落ち、予想通り赤い顔と涙目ながらに睨む翠の瞳が露わになった。
――名付けて、【ハングリー・コミュニケーション大作戦】、大成功である。
あたしは心の中で『YES!』とガッツポーズをとった。
そして込み上げる笑顔を抑えることなく、そのままニヤリと話を切り出した。
「お、やっと喋ってくれたわね」
「あっ……!」
一瞬きょとんとしたユミルは慌てて顔を伏せてフードで再び顔を隠そうとする。が、首と後頭部にフードが引っかかり、もたもたと手間取っていた。
あたしはそれに苦笑しつつ、ユミルの隣にすとんと腰を下ろして同じく石柱に背を預けた。
「……食べてくれないかな。これは、ユミルくんの分なんだから」
「い、いらないっ……」
ついにフードを被る事を諦めたユミルは、ふいとそっぽを向く。
「リズベットが、ボクの分も食べていいから……」
「――リズ」
「え?」
「リズベットじゃなくてっ……リ・ズッ!」
「わづっ!?」
あたしは未だに堅苦しく自分をリズベットと呼ぶユ
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