26:人生の先輩
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よそい、あくまでいつもの感じで立ち上がってみせた。アスナが見上げてくるも、彼女は首をふるふると左右に振る。
「ユミル君の所へ行くの……? でも、きっとダメだよ……。今はそっとしておいた方が……」
「あたし、マーブルさんに教わったんだ」
「え……?」
アスナが首を傾げる。
それにあたしはニッと不敵に笑ってみせた。……あたしの秘かに恋する、どっかの誰かさんのように。
「あたしは決めたの。あたしはあの子が死神かもしれないと受け入れる。だけど……あたしは、もうあの子を悪い子だと思わない。昨夜少しだけ垣間見せてくれた、あの無邪気なユミルくんが本当のユミルくんだと、あたしは信じてる」
「リズ……」
それからアスナは頷いて、少しだけ微笑んでくれた。
「……やっぱり、リズはわたし達の中で一番まっすぐで、しっかりしてるよ」
「褒めてもなにも出ないわよ。それに……ああいう子を見てると、なんだか刺激されちゃうのよね」
「なにが?」
「保護者的感情」
「―――――」
そのあたしの一言に、アスナはポカンと口を開けた後、すぐに眉尻を下げて可笑しそうにぷっと噴き出した。
「あはははっ。ホント、リズってそういうお姉さん的なトコあるよねー」
「マーブルさんには適わないけどね」
あたしは背にアスナのクスクス笑いの加護を受けながら、リゾットを手にユミルの元へと向かった。
◆
「ユミルくん」
「……………」
チラリとも見ずにユミルはだんまりを決め込む。
「あたし達でリゾット、作ったんだ。食べない? 今はマーブルさんが居なくてちょっと味のグレートは落ちちゃうだろうけど、料理スキルが900代のアスナがメインで作ったんだから、すごくおいしいよ?」
ユミルは被ったフードを僅かに左右に振り、足元の石畳と森林の境目へと目を逸らした。
「……一応、リアクションは返してくれるのね。ありがと。……だけどさ、言葉でお話、しないかな?」
しかし、ユミルの反応は変わらない。
そのまま、背後のキリト達の喧騒が背中を叩くだけの気まずい沈黙が続く。
――だけど、退くもんですか。負けてたまるもんですか。まだまだこのくらいでへこたれるあたし、篠崎里香ではない。
手に持つお皿に僅かに力がこもる。
……あ、そうだ。
ここでちょっとした天啓を思いつく。
「……ユミルくん、このリゾットなんだけどね」
「……………」
「まず、焚き火の上に乗せたフライパンにバター落としてさ、お米と微塵切りに刻んだ玉葱を入れて炒めるの」
「…………?」
ユミルが突然何を、と言いたそうに僅かにこちらをチラリと見て首を傾げ
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