第十一話
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赤なクリスタルだ。それが地平線の彼方まで続いており、先は見えない。空は漆黒で、明かりの一つすらも存在しないが、地面のクリスタルが仄かな光を灯しているので、暗いという印象は受けなかった。
幻想的な空間である。
「・・・これが、俺の心象世界、か?」
原作において、進化の階段は全体的にブルーの空間であった。中央に椅子とテーブルが置いてある、落ち着いた世界だった筈だ。だが、恐らくアレは、主人公の不知火とココロの心象世界だったのだろう。彼とココロは、幼い頃からあの世界で頻繁に話し合いをしている。心象世界の住人という稀有な存在がいたからこそ、不知火は『階段』の存在を、パッチを装着した当初から知ることが出来たのだ。『昇る事が出来る物が存在する』と知っていたからこそ、彼は今まで火星の人類が発見することも出来なかった進化の階段を昇る事が出来た。他人とは、そもそもの出発点が違ったのである。
だからこそ、葵は自分が階段を昇る事が出来ると信じていた。
『階段があることを知っていて』、『階段を昇る確固たる目的と意思があり』、『それを昇るに十分たる敵がいる』。彼は、これらの条件を全て満たした(勿論、階段の存在を知らなくても、昇る事が出来る人間はいるが、非常に稀)。知っているからこそ、昇れる。それが、彼の自信の根拠だった。
それが、証明されたのだ。
「・・・さて。」
後ろを振り向く。そこには、フロアの床よりも深く、とてつもない威圧感を感じる螺旋階段。上も下も果てが見えず、高揚するよりも、『これを昇ったらどうなるのか』という恐怖が葵を蝕む。
それは、生物として当然の反応だ。・・・しかし。
「ハッ・・・!これを昇ったらどうなるかだって?そんなの初めから分かってただろうがよ。」
嗤う。この期に及んで怖気づく自分の心を、彼は嘲笑した。
「どの道、ここを乗り切らないと俺に未来はない。ヴォルケイノはなのはが倒せる相手じゃない。そしてコイツは、俺を殺したあと、全てを破壊するだろう。」
なのはやユーノ。いるかどうかは分からないが、フェイトですら、この敵には勝てない。この敵は、それほどの『災害』だ。人類への試練だ。
―――だからこそ、この災害を、乗り越える。
「お前は俺の踏み台だ。大人しく超えさせろ!!!」
叫び、一歩を踏み出した。
「ガッ・・・・・・!!!」
焼ける。灼ける。体の奥底から、さっきのヴォルケイノの拳とは比べ物にならないほどの熱が彼を襲う。体が組み替えられる。一歩進むごとに、人間から離れていく。
「―――ハッ・・・!」
それを。『人間じゃなくなる』という、一般人なら間違いなく恐怖し、忌避するその熱を。
「ハハ、ハハハハハハハハハハ
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