第十一話
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、辛うじて原型を留めていたビルの屋上に墜落したのは不幸中の幸いだっただろう。未だ高温を保ち続けている溶岩の海に落ちれば、それだけで勝負は決していたかも知れない。余りの痛みに、擬似空戦技能で飛ぶことさえも忘れてしまっていたのだから。
・・・しかし・・・
(ッッッッッ・・・・・・!!!)
既に、痛みで思考はマトモに働かない。幸い、両腕共に骨は残っていた。焼かれていた時間が短かったからであるが、逆に言えば、拳が触れて吹き飛ばされるまでのその僅かな時間で、パッチユーザーにここまでのダメージを与える事が出来るということだ。上半身の服は全て吹き飛び、ズボンもボロボロだが、炎が燃え移ってはいないのは幸いだった。
「ア・・・アアアアアアアアアアアアア!!!」
ダン!と、彼は足を強く屋上に叩きつけた。自分に気合を入れるための儀式のようなものだ。その衝撃で、既に限界だった屋上にビシビシとヒビが入り崩れて行くが、今の彼にそんなものを気にしている余裕はない。
『GAaaa!!!』
そう、敵は既に、次の攻撃を始めていたのだ。彼は葵にではなく、大空に両手を向けていた。その両腕から、信じられない量の溶岩が吹き出て・・・降り注ぐ。
「少しぐらい・・・休ませろ!!!」
神経は、今も気が狂いそうな程の痛みを脳へと与え続けているが、彼はそれを気合で無視した。何故なら、空を覆い尽くす程の溶岩の雨・・・否、『滝』が、彼目掛けて降り注いでいるから。それはさながら、『溶岩の大瀑布』であった。
「あああああああああああああ!!!」
全力で逃げる。彼は、擬似空戦技能で空を走る。両腕が動かない為にバランスを崩しそうになりながらも、全力で走り続けた。
ドドドドドドドドド!!!
背後で、『大瀑布』が『海』に流れ込んだのを音で確認し、命からがら範囲から逃げれたと安心した・・・その瞬間。
ドッ・・・!
「嘘だろ!?」
今も降り注ぐその『大瀑布』を突っ切って、ヴォルケイノが突撃してきた。
「あれ程の攻撃が目晦ましだっていうのかよ!?」
もはや戦略兵器並みの威力と範囲を持つ攻撃でさえ、葵の目をそれに釘付けにするための囮であった。自身が溶岩で構成されているため、ヴォルケイノが自分の溶岩でダメージを負うことはない。彼は、自らが生み出した『大瀑布』を突っ切って、葵のすぐ後ろを追いかけていたのである。
「グッ・・・!?」
『Aaaaaaaaaaaa!!!』
間一髪。顔面を狙ったパンチを、防御しては先の二の舞だと、首を逸らして避ける事に成功するも、敵自身が持つ圧倒的な熱量が葵を攻撃する。完全に避けたはずなのに、彼の顔の右側の皮膚が焼けただれた。
「クッソオオオオオオオオ!!!」
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