第百九十二話 大返しその七
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「だからじゃ」
「毛利にも備え」
「そのうえで」
「一気に返すのじゃ」
安土まで、というのだ。
「そうするのじゃ」
「畏まりました」
「それでは今すぐに」
家臣達も応える、そしてだった。
織田軍はすぐに陣を引き払い早馬を進む先に飛ばしてだ、そのうえで慌ただしいまでに高松城の周りから消えた。
その彼等を見てだ、元就は言った。
「戦じゃな」
「東国で、ですな」
「今度は」
「どうやら武田と上杉が動いた」
こう息子達に言うのだった。
「それでじゃ」
「すぐに陣を引き払い」
「東に向かうのですな」
「それ以外にはない、では我等はな」
毛利としてはどうするのかもだ、元就は言った。
「安芸に戻るぞ」
「織田を追いはしませぬか」
「今は」
「幾らわしでもそれはせぬ」
謀神と言われた彼でもだというのだ。
「そこまで信義に反することはな、それにじゃ」
「ここで仕掛けてもですな」
「そうしても」
「勝てる筈がないわ」
織田に、というのだ。
「返り討ちに逢い今度こそ滅ぼされる」
「その全てを失う」
「そうなるということですな」
「だからじゃ、最早我等は我等の考えで戦をせぬ」
今だけでなくこれからもというのだ。
「織田家に入ったからな」
「だからですな」
「ここは」
「安芸に戻り政にあたるぞ」
そうするというのだ。
「織田家の政は民を考えておるもの、それに従いな」
「国を整え、ですな」
「民を豊かにするのですな」
「そうするぞ、では下がるぞ」
「はい、それでは」
「これより」
こうしてだった、毛利軍は信長との和議を守り兵を退けさせてそうしてだった。安芸に戻り信長の下に加わるのだった。信長はそのことは安土に戻る中で聞いた。その時織田軍はまさに駆けて戻っていた。
その中でだ、信長はそのことを聞いて言うのだった。
「ふむ、左様か」
「はい、毛利は東国のことを聞きましたが」
「それでもじゃな」
「安芸に兵を戻しています」
「左様か、流石は毛利元就じゃ」
元就を褒めさえする信長だった。
「状況をわかっておるわ」
「ここは織田家に従うべき」
「織田家に入るべきだと」
「毛利が来れば毛利を滅ぼさねばならなかった」
そうせざるを得なかったというのだ。
「必ずな」
「完全に、ですな」
「そうせねばなりませんでしたな」
「安芸も長門も」
「全てを」
「そうじゃ、東国のことを止めてもな」
岐阜や金沢でだ。
「多少時がかかろうともな」
「毛利を完全に滅ぼす」
「そうせねばなりませんでしたな」
「そうじゃ、だからな」
それで、というのだ。
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