第百九十二話 大返しその五
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「ではじゃ」
「はい、今すぐにですな」
「陣を引き払い」
「安土まで、ですな」
「戻るのですな」
「武田、上杉が遂に動いた」
それならというのだ。
「ならばな」
「安土に戻り、ですな」
「そのうえで」
「双方に対する」
「そうしますな」
「そうじゃ」
その通りだと言う信長だった。
「ではよいな」
「殿、ことは一刻を争いますが」
柴田が信長に問うた。
「このまま具足を付けたままですと」
「足が鈍るのう」
「そこはどうされますか」
「具足は馬に乗せてじゃ」
織田家が多く持っているそれにだ。
「そうして運ばせてじゃ、我等はな」
「具足を脱いで馬に乗り」
「駆ける、無論足軽達もじゃ」
彼等もというのだ。
「駆けながら進むのじゃ」
「そうせよというのですな」
「飯は進む途中に用意させる」
飯のことも言う信長だった。
「その手配はじゃ」
「はい」
「我等ですか」
「二十万の軍勢の進さきむ先にじゃ」
そこにだというのだ。
「飯と水を用意せよ」
「はっ、では」
「その様に」
石田や万見達が信長に応えた。
「さすれば」
「これより」
「一刻も早く安土に戻りな」
二十万の大軍で、というのだ。
「東国を平定するぞ」
「武田、上杉、北条を軍門に降し」
「そうして」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「その為に一刻も早く戻るぞ」
「はい、さすれば」
大谷が応えた。
「道中の飯や水、そして武具の運びは」
「御主達に任せるぞ」
「是非共」
大谷もこう応えてだ、そしてだった。
信長は毛利との和議が成り彼等を織田家に入れてすぐにだった、その大軍を東に戻すのだった。その中でだ。
信長は家臣達にだ、こうも言った。
「山陰の猿夜叉達もだ」
「はい、和議が成ったので」
「だからですな」
「安土に戻れと伝えよ」
こう言うのだった。
「猿と小竹はな」
「では猿夜叉様は」
明智が長政のことを問うた。
「どうされますか」
「猿夜叉は金沢に行ってもらう」
あの場にだというのだ。
「浅井の家臣達を連れてな」
「ではそこで」
「うむ、北陸の兵を集めてな」
そうして、というのだ。
「あの地で上杉を迎え撃ってもらう」
「そうお考えですか」
「上杉謙信は強い」
信長が最もよくわかっていることだ、このことは。
「金沢城はまだ築城して間もない」
「はい、それは」
上杉との戦が引き分けに終わり加賀の手取川の北まで織田家が進出してすぐにその政の拠点そして上杉への備えとして築いた城だ、本丸は築いたがまだ完成してはいない。
それでだ、信長は言うのだ。
「兵は入れられても守りはまだ頼りない」
「しかし金沢を失うことは」
「そのま
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