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美しき異形達
第三十四話 湖のほとりでその十三

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「それはな」
「そうね、知っていてもね」
「勝てるかどうかは別なんだよな」
「その通りよ、相手を知るだけではまだ充分ではないわ」
 それはだ、菖蒲も言うのだった。
「己も知ってこそ、それもどちらも充分にね」
「俺達の全部は知ってるか?」
「知らないよな」
 鮫の怪人だけでなく鰐の怪人も言って来た、夜の闇に慣れた目に映る鮫の怪人は青く鰐の怪人は緑だ。それぞれの色だ。
 その怪人達がだ、こう言うのだった。
「俺達は御前等のことを知っている」
「それもよくな」
「頭の中に自然と入っているんだよ」
「八人全員のことをな」
「それは何時のあたし達なのかね」
 ここでこう返したのは薊だった。
「今のあたし達かい?」
「今のか」
「御前等はというのか」
「そうだよ、まさかあたし達がずっと変わらないって思ってるのかい?」
 こう問うのだった。
「いつもな」
「今の御前等はか」
「違うんだな」
「それを見せてやろうかい?」
 薊は不敵な笑みになった、そしてその笑みでだ。
 武器を出そうとする、しかしここで。
 菊が前に出て来てだ、こう言ったのだった。
「まあまあ、ここはね」
「何だよ、菊ちゃん」
「私に任せてくれるかな」
 こう言うのだった。
「そうしてくれる?」
「菊ちゃんが戦うのか」
「今の私を見せたくなったから」 
 そう思うからこそ、というのだ。
「だからね」
「それでか」
「そうしていい?」
 薊にあらためて問うたのだった。
「今回は」
「だからか」
「そう、これからね」
 戦うと言ってだ、そのうえでだ。
 まずは菊が出た、そしてその次にだった。
 向日葵も出て来てだ、こう言ったのだった。
「私もね」
「今の向日葵ちゃんを見せたくなったんだな」
「相手にね、何しろね」
「何しろ?」
「人は立ち止まることもあるけれど」
 それと共に、というのだ。
「前に進むものだからね」
「それでか」
「菊ちゃんと一緒でね」
「今の向日葵ちゃんも見せたいんだな」
「ええ、そうよ」
 それでというのだ。
「戦わせてもらうわ」
「そうか、じゃあな」
「今回は私とね」
「私が戦うわ」
 こう薊達に言うのだった。
「だからね」
「皆休んでいてね」
「随分軽いな」
 その二人にだ、薊は少し笑って言葉を返した。
「これから命懸けの戦いだっていうのに」
「確かにそうだけれどね」
 命は賭けるとだ、向日葵もそのことは認めた。
「けれどあまり緊張してもね」
「かえってよくないからね」
 菊も薊にこう言葉を返した。
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