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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
縁は連なりて
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たままでは、意識せずともいずれ争いに身を投じることになるのは確定だろう。
それを吹っ切られればどれだけ楽なことか。
生涯を掛けて成し遂げてきたことを屑同然に捨てられるならば、誰も苦労しない。
未練があるということは、比例して執着していたということでもある。
表裏一体に存在するそれのおかげで、ヒトは向上心を得ることができる。
たとえ自分で振り切ったと思っていても、気が付けば目で追っている。
深層心理の根幹に根付いてしまっているものは、生半可なことで払拭することはできない。
ましてや人間と妖怪という、古来から水と油とされていた種族が併存する世界にいて、争いと無縁だなんて有り得ない。

「どうやら私の幸福とやらを見つけるのは相当骨のようだぞ、凛」

誰ともなく呟き、快晴の空を仰ぐ。
ふと口元を指でなぞる。
そこには確かに、笑顔の輪郭があった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


奇抜な格好をした白髪の青年と別れ、妖精達はどこでもなく歩き出していた。

「………優しかったね、あの人」

エプロンドレスの妖精―――サニーミルクが余韻に浸るように呟く。

「うん、妖精である私達に謝った人間なんて、初めて見た」

縦ロールの妖精―――ルナチャイルドがそれに頷く。

幻想郷における妖精の扱いは、おおよそ知的生命体に対する正統な人権どころか、生物としても下に見られている傾向にある。
その要因に一役買っているのが、妖精は肉体的に死を迎えても復活するという希有な特性にある。
大元となる自然から現出し、それが消滅しない限りは死ぬことはない―――即ち、不死。
死なないから幾らぞんざいに扱おうとも心が痛まない。
流石にそれは極論かもしれないが、邪魔だから攻撃を仕掛けられたこともあれば、観賞用に捕らえられたりなど、そう思わせる行動を取る者がいる事実に偽りはない。
妖精としては巨大な部類に入る彼女達の身長は、小児程度はある。
外見も幼女相応のあどけなさが残り、羽さえなければ人間と見分けがつかない程。
しかし、妖精という肩書きひとつでヒトは残酷になれる。
同じ外見でも、妖精なら気兼ねなく暴力を振るえるという風潮が、そこには確かに存在する。
言うなれば、人間や妖怪にとって妖精は羽虫と同じなのだ。
知覚範囲外であれば気にも留めず、視界に入り邪魔と判断すれば平然と叩き潰される。
そんな不条理を事あるごとに受けてきた彼女達が、彼の青年へ受けた優しさに過敏に反応するのは、ある意味当然の出来事であった。

「撫でられたとき、凄くぽかぽかした気持ちになったんだ。なんて言うか、満たされているって言うのかな?お父さんがいれば、あんな感じなのかな」

「それよりも兄の方が近いと思うけど、それには同意するわ」

青年の話題に花
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