暁 〜小説投稿サイト〜
エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第三十八話 不屈の巫子
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
味する。マナの色によっては性格もふるまいも変わる。それが今のあの態度だろう。
 私が知る〈ミラ〉は、厳格だが他人を頭ごなしに叱りつけたり無視したりはしなかった。

 ミラは海瀑から上がらなかった。イバルに背を向けた態勢だったので、イバルがこれ幸いと思ったかは知らないが。イバルはミラの後ろに回って、櫛で髪を梳かし始めた。量の多い金蘭の髪。

 ふいに、エルの亜麻色の髪をブラッシングした時のことが回顧された。何度も、ていねいに、枝毛一つ縮れ毛一つないようにと心を配った。どこか、重なった。

「マクスウェルがエレンピオス人そっちのけで優雅に水浴び?」

 海瀑のあちこちに黒球が着弾し、水柱を立ち昇らせた。
 私たちを狙っていない。ただの威嚇、または力の誇示が目的の攻撃だ。

「ミュゼ――!!」

 水色の大精霊は、艶やかに細い指を片頬に当てて小首を傾げた。

「ニ・アケリアのほうに行こうと思ったら、こんなところにいたのね。ミラ」

 ミラは答えず、水から上がる瞬間にはマナを黒衣の形に形成し直していた。
 得意のポーズで呼び出されるは、地水火風の四大精霊。

「狙いは私か」
「それもあるけど、あっちもね。言ったでしょう? 私の使命は断界殻(シェル)を知った者を殺すことだって」

 晴れがましい笑顔で両腕を広げるミュゼ。

 途方もない悪寒が走った。このミュゼ、ニ・アケリアを襲うつもりだ。口伝程度にしか断界殻(シェル)を知らない老人たちを殺す気だ。

「その前に、後でうるさくなるでしょうから、ここでハエは退治しておきましょう」

 言い返す暇もなかった。ミュゼの天高く掲げた指の上には、風船のように巨大化していく磁場の球。もう人一人すっぽり入り切る大きさになった。

 あれを放たれたら。

 骸殻がある私と、四大精霊のいるミラはいい。だが、イバルとエリーゼは。

「全てを飲み込み、乾きの地へ誘え! 虚数の牢獄!」

 とっさに傍らのエリーゼを抱えて飛びのいた。私の手が届く範囲は彼女一人。イバルとミラには独力で避けてもらうほかない。

「イベントホライズン!!」

 周囲一帯で巨大な黒球が爆ぜ、海瀑が大きく弾けた。一拍置いて、立ち上った海水が雨のように降り注いだ。

「平気か、エリーゼ」
「はい。でも、イバルは」

 一時の雨が降りしきってから、イバルとミラを探した。

 イバルは……いた。岩場に四つん這いになっている。ダメージが深かったのかと思えば、それもあるが、それだけではなかった。
 イバルの下には転がったミラ。
 イバルは自身を盾にミラを守ったんだ。





/Ivar

 体をミラ様の上からどかす。背中、相当やられたな。痛いというより、痺れ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ