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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第三十八話 不屈の巫子
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 理由は分かりきっている。
 ジルニトラ号沈没の直後、ミュゼが暴露したミラの正体。


 はっきり言って想定外だった。現役時代に分史世界に行った時も、あくまでミラは次代マクスウェル、単なる順番だと漠然と受け止めた。ミラが老マクスウェルに造られたという話も、後継者としてという意味で捉えていた。

 偽物。オトリ。餌。無意味。

 ここまで宣告されたら、並みの人間は心が折れる。それでも黒匣(ジン)狩りをやめないのはミラらしいと言えばらしいが。

 エレンピオス人の前に身を曝し、殺意と憎悪を浴び、それらを返すようにエレンピオス人を殺す。
 ああ、確かにミラは使命を遂行している。
 だが今のミラにはかつての情熱がない。意志がない。ルーティンワークだ。与えられた命令通りに動くだけのロボットだ。

 手紙の内容を読み終えてから、竈の火に手紙をくべた。他の村人に見つかったら大事だからな。内容はもう覚えた。返事は帰ってからにしよう。

「イバル。どうせ行くのはキジル海瀑だろう。私も行こう」
「好きにしろ。俺はミラ様で手一杯だ。ルタスはお前がどうにかしろ」

 出ていくイバルに苦笑し、エリーゼが今朝摘んだ花を持って、家を出た。







 ニ・アケリアを出てキジル海瀑を行くと――いた。ミラ。それにエリーゼ。

 滝の近くで、黒衣と金蘭のポニーテールを血に濡らしたミラを、エリーゼが治療している。
 もっとも、四大精霊がいる彼女に、重い傷の心配は無用なのだが。どちらかといえば、返り血を気にしないミラをイバルが心配して、こうして帰るたびに水浴びか湯浴みを勧めてきた。

「エリーゼ」
「あっ、ヴィクトル」『わーい、来てくれたんだー』
「忘れ物を届けにね。ほら、ミラに渡したかったんだろう?」

 小さな花をエリーゼに見せると、エリーゼははっとした顔をして、礼を言って私から花を受け取った。

「あ、あの、ミラ。これ、キレイな花だったから、ミラに……」

 おずおずとエリーゼが差し出した花々を、ミラは無機質な目で見下ろし、――叩き落とした。
 花が海に落ち、流れて、沈んだ。

「花を摘めば草花の微精霊が死ぬ。鑑賞目的に花を摘む行為を私は好かぬ」
『あうぅ〜』「ご、ごめんなさい」

 このままだと泣きかねない。戻ってきたエリーゼの肩に腕を回して抱き締めてやった。

 ミラは意に介したふうもなく、結っていた髪を解き、黒衣を着たままで海に入った。
 水に、赤が染み出す。瀑布をシャワー代わりに、ミラは返り血を落としていく。

 ――〈槍〉に取り込まれていた時に吸わされたマナの影響かもしれない。とは、最近考え出した仮説だ。

 精霊はマナの塊だ。他者のマナを得るとは他者と交わることを意
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