十九話:世界はきっと残酷だ
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ん。仮にも“審判を越えし者”だ。あやつは人間の中ではマシな部類だろう」
軽く鼻を鳴らして気に入らないとでも言いたげなクロノス。
だが、その言葉は“審判を越えし者”を少し認めているようでもあった。
クロノスはもう用は無いとばかりに移動しようとしてあることに気づく。
「オリジン……今“彼等”と言ったか?」
「うん、そうだよ。クロノス」
嬉しそうに笑うオリジン。
クロノスは自分の記憶をまさぐる。
確かにこことは違う異世界に“審判を越えし者”は行った。
肉体まで与えて復活させることも認めた。……不承不承ではあったが。
だが一人だ。“彼等”と言う複数形になることはない。
「オリジン。どういうことだ?」
「ここは魂の循環を司り、魂を転生させる場所。それは全ての人間に適用される」
「何を今更。我が聞きたいのはそんなことではない」
楽しげなオリジンに反して。クロノスは若干、苛立っている。
それでも彼等は唯一無二と言ってもいいほどの親友なのだから不思議なものだ。
「わかってるよ。クロノス。じゃあ、もしその流れに逆らう人間が出てきたら?」
「ありえん。魂の循環に逆らえる者など存在するはずがない」
「うん。僕も不可能だと思っていたんだ。でも“彼”は逆らって見せた。本当に人の可能性にはいつも驚かされるよ」
「逆らったのは一人か?」
そう尋ねるクロノスに頷くオリジン。
そのことに少し安堵するクロノスだったが。
その気持ちはオリジンの次の言葉によって打ち砕かれる。
「でも、“彼”について行った魂は少しいるよ」
「……どうなっているのだ?」
訳が分からないと頭を抱えたくなるクロノス。
彼は人間を嫌いながらその実、人間によく似ている。
それを言うと不機嫌になるのはいつものことだが。
「どういう理屈なのかは分からないけど。“彼”が魂の循環に逆らって異世界に辿り着き。そしてそれについて行った魂があるのは事実だよ」
「……分かった。魂の循環に逆らったのは認めてやろう。だが肉体が無ければ何もできぬ。違うか?」
「うん。肉体が“無ければ”ね」
そう言って楽しげに笑うオリジンに。
クロノスは事の次第を悟る。
「オリジン……そやつらに肉体を与えたな?」
「うん。それだけ意志の強い人間が何をなすのかをこの目で見たいからね」
予想通りの答えにもはや呆れもしない。
それだけオリジンとの関係が長いのだとクロノスは現実逃避をする。
そんな彼はどこまでも人間らしい。だからこそ、オリジンは彼が好きなのだが。
「彼等の行く末を見守るのが。最近の僕の楽しみさ」
「オリジン。小言を聞く準備は出来ているのだな?」
少し、怒った風に言うクロノス。
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