第6章 流されて異界
第108話 蒼の意味
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て来る気配。普通の人と比べると少しゆっくりとした足取り。纏っている雰囲気はやや希薄。
この感覚は……。
ギィっと言う擬音と共に開く鉄製の扉。普段……少なくとも俺がこのマンションに住むようになってから、こんな深い時間帯に屋上になど訪れる酔狂な住人など居なかっただけに、今宵この場所の人口密度の高さは異様なのですが。
再び、闇の中で蛍光灯が切り取る空間の中心に現われる人影。背中から照らされるその微妙な陰影からも分かる、その造り物めいた容貌。いや、逆光で僅かに翳の差した表情の方が何故か彼女……神代万結には相応しい。
白のセーター。チェックのミニスカートに黒のストッキング。何と言うかすごくシンプルな衣装。彼女は確か玄辰水星と一緒に暮らして居たと思いますから、このチョイスは玄辰水星のチョイスだと思いますが……。
ただ、彼女に白が似合うのは事実。おそらく明るい蒼の髪の毛と白すぎる肌がそう感じさせるのでしょうが。
真っ直ぐに。――まるで目標物しか見えていないかのような雰囲気で、真っ直ぐ俺の目前まで歩み来る万結。確かにセーターは着込んで居る。……が、しかし、真冬の夜中にマンションの屋上に出て来るような服装ではない。
そして、俺の目前。大体、一メートルほどの距離を開け立ち止まった。
そうして、静かに俺を見つめる万結。そんな細かな仕草も、有希とまるで双子の如き相似形。
「お風呂が空いたから直ぐに入るように、……と言う団長からの指令よ」
そして、お風呂の掃除をしてから上がりなさい。
夜気に淡く広がる万結の言葉。その言葉は彼女の色素の薄いくちびるを僅かに白くけぶらせ、そして直ぐに消えた。
……って、口元が白くけぶるって、こいつ!
「そうか。それなら、さっさと帰らんとアカンな」
グズグズして居るとハルヒのヤツが、「掃除が出来て居ないわよ」と言って怒り出す可能性が有るからな。
そう、軽口を口にしながら万結に対して一歩分進む。もっとも、その目的は彼女を冬の寒さから護る為。本当に、どいつもこいつも、今日が冬。それもこの冬一番の寒い夜となる、と天気予報で予報されている夜だと言う事を無視する連中ばかりで……。
ただ、冗談抜きで俺を呼びに出て来た万結が戻らなければ、次はそのハルヒ自身が探しにやって来ないとも限ませんか。アイツがやって来るとまた余計な事に時間を割かれて、貴重な睡眠時間を削られる結果と成りかねませんから……。
「そうしたら、俺は部屋に戻るけど、朝倉さんはどうする?」
一応、振り返りながら、そう問い掛ける俺。尚、彼女に纏わせた炎の精霊たちは、最低でも後一時間程度は朝倉さんを守り続けるでしょうから、このまましばらくこの場に留まったとしても問題はないはずです。
もっとも、
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