第6章 流されて異界
第108話 蒼の意味
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示録に向かう可能性の有った歴史の流れを記憶して居なかったはずなので、本人の意志の確認は為されていなかった内容が再び確認された事に安堵の溜め息を漏らす俺。
確かに、今年の五月に起きた事件の後、本人の意志で彼女らの造物主たる高次元意識体の元から地球サイドの組織へと庇護を求めて来た際に、個人の意志の確認は行われたはずです。……ですが、それは歴史が変わる前の話。歴史が変わり、彼女……今回の場合は朝倉涼子にその際の記憶が一度失われ、蘇えった記憶が高次元意識体の手先として使われていた時のみの記憶だった場合は、再び地球に暮らす生命体の敵としての活動を開始する可能性だってあるのですから。
異世界同位体の俺の願いは、生きてその場所で問題なく暮らしている存在を無暗に殺さない事だったはず。故に、歴史の改竄を行った異世界の未来人。そして、世界の破滅をもたらしかねない神々の母が産み出した高次元意識体の造り出した対有機生命体接触用端末の長門有希や朝倉涼子などに、独自の過去まで与えて、この世界で暮らして行けるようにしたはずなのですから。
「私が知りたいのは他の人には見えていない月に関して。私の知っている限り、あんな物は無かったはずなのに……」
満ちる事も欠ける事もなく毎晩、満月の姿で上空に存在している。何時から其処に有るのか判らない。でも、何時の間にか其処にあるのが当たり前のような雰囲気で存在していて、それでも私以外の人の目には見えていない月について知りたい。
一息の元にそう言い切る朝倉さん。そして、心を落ち着かせるかのように小さくため息をひとつ。
「もしかしてこの現象の中心にも彼女が……」
高次元意識体に送り込まれた際の彼女らの表向きの活動理由は、確か涼宮ハルヒの観察。ただ、どうもそれ以外の理由が有ったらしいと言うのは水晶宮から渡された資料に記されていました。そして、朝倉さんにその当時の記憶がどの程度残っているのか判りませんが、その中でも一番重要な任務に関して残って居ないと考える方が不自然ですか。
ただ……。
「アレに関しては俺たちの方にも判って居る事は少ない」
アレ。中天に輝く蒼き月を見上げながらそう言う俺。
そう、蒼き月。ハルケギニアにあるふたつの月の片割れが、何故かこの世界にも存在していた。
「此の世が終わりに近づいた時に現われると言われている偽りの月ネメシス。もうひとつの月スサノオと呼ばれる物、……だと裏の世界で言われている蒼き月」
其処に存在して居るように見えながらも、実際には存在していない月。もっとも、そもそも現実の地球の衛星としての『月』と同じサイズの衛星が突然現れて、元から有った月の内側で
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