第6章 流されて異界
第108話 蒼の意味
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似をしたのは、有希がここに居なかったからなのでしょうから。
「それで、わざわざ鎌を掛けるような真似をしたんやから、何か聞きたい事があったんやろう?」
お互い、ビジネスライクに話を進めましょうか。流石に、最後の部分は実際の言葉にする事もなく、表情のみで表現しながらそう答える俺。但し、お互い上空の蒼き月に視線を送ったままなので、朝倉さんが俺の表情に気が付いたとは思えないのですが。
まして、俺の正体が妙な能力を持った異能者だと彼女が疑いを持って居たとしても、それが絶対の弱みとなる訳では有りません。そもそも、そんな事を不特定多数の前で暴露されても信用される訳は有りません。むしろ彼女の方の正気を疑われるだけ、ですから。
それに、現在の日本政府に繋がる天中津宮がそんな怪しげな情報は、取るに足りない都市伝説のひとつとして、簡単に人々に忘れ去られるくだらない噂となるように工作するはずですから。
しかし――
「私にも武神さんに関しての思い出があるんですよ」
しかし、この場ではあまり意味のない内容の話を始める朝倉さん。
背の高いマンションの屋上を吹き抜けて行く強い風。但し、俺の支配の及ぶ範囲内では彼女の髪の毛すらそよがせる事も出来はしない。ただ、蒼く冷たい光のみが彼女を照らし続ける。
「今、従姉と暮らしているマンションではない。でも、何故か私が一人暮らしをしていた記憶があるマンション。其処の近くにある公園で、あなたに出会った事がある……。
私が覚えて居る限りに於いては、私は一人暮らしなんてした事がないはずなのに」
高校に入学するまでは両親と暮らして居て、高校に入学と同時にお父さんが仕事の都合で海外に赴任。お母さんもそれに付いて行って、私は大学に通う事となった従姉と一緒に暮らすようになったはず……なのに。
顔を見ずとも……それに、彼女が発して居る気を読まずとも判る。今、彼女が苦笑を浮かべて居る事は。
「大丈夫ですよ。私は一人暮らしの冷たく、寂しい部屋に帰りたいとは思いませんから」
心を持たない人形のような生活に戻りたい、なんて考える訳はないでしょう。
言葉はかなり明るい雰囲気。しかし、今の彼女が示すのは拒絶。確かに心が発生した存在に対して、元の心のない物と同じように扱っていたとするのなら、彼女が彼女の創造主に抱いていた感情は容易に想像が付くと言う物か。
今の彼女の言動及び、発して居る雰囲気から推測すると、少なくとも、朝倉さんが以前の歴史……。自らを造り出した創造主の求めて居た世界の到来を望み、もう一度、歴史の改竄に及ぶ可能性はないと思えますね。
有希に関しては確認済みの事実だったはずの内容なのですが、朝倉さんに関しては歴史が書き換えられた時に、それ以前の黙
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