第6章 流されて異界
第108話 蒼の意味
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める俺。その短い言葉の中に含まれる溜め息が、口元を僅かに白くけぶらせる。
そして訪れる静寂。いや、これは――おそらく緊張。
ゆっくりと回る時計の秒針。冬の夜に相応しい静寂の中、共に視線を交わらせる事もなく上空を見つめるのみの二人。
「否定しないのですか。昨日の五日は新月だったよ、と……」
偽りの蒼き女神に照らされた世界。静寂に眠る街の中心で先に折れた彼女が、小さな苦笑と共にそう問い掛けて来た。ただ、その時の彼女の口元は白くけぶる事はない。
そう、中天に輝く蒼い月は実際に其処に存在する月……地球の衛星たる月などではなく、ある一定以上の能力者にしか見つける事の出来ない偽りの月。あらゆる科学的な方法ではその姿を捉える事は出来ず、一般人にも見る事は出来ない幻。
但し、
「確かにそう言って、科学的な根拠の元に否定する事は簡単やろうな」
但し、そんな答えを今の俺の口から聞いたとして、朝倉さんはそれを百パーセント信用出来るのか?
僅かな溜め息と共にそう問い返す。どうにも俺の周りに居る少女たちは、俺の事を試すような真似をするばかりで……。
もっと、こう素直な……俺の事を簡単に信用してくれる相手と言うのはいないものかね。……などと、武神忍と言う存在そのものがかなり胡散臭い存在である事は棚に上げて、非常に勝手な事を考える俺。
尚、今回の場合は……。
今までの俺とハルヒの会話から、俺に少し奇妙な部分がある可能性に、朝倉さんが辿り着いて居たとしても不思議ではない。そして、夕食時の会話の内容……朝比奈さんのチアガールのコスプレの時の寒さ対策云々の会話から、俺の特殊な能力の有無を試してみる気になったとしてもおかしくはないと思います。
例え、現実と言う幻想がその現象――例えば、周りの人間が誰一人見えていないふたつ目の月を自分だけが見えて居る事実や、魔法に近い不思議な能力が存在する事を否定して居たとしても、自分で確認するまでは簡単に信用しない人間が居たとしても不思議では有りません。
俺の事をかなり申し訳なさそうに見つめる朝倉さん。しかし、
「私が帰る素振りを見せなければ、武神さんはきっと私に寒い思いをさせないと信じていましたから」
言葉にしたのは謝罪の言葉などではなく、俺に対する妙な信頼。ただ、この信頼と言うのは、裏を返せば彼女に取って俺が扱い易い相手だと言う事。
それで思いっきり鎌を掛けるような真似をした、……と言う事なのでしょう。
それに――。
少し風通しの良く成った右側に意識を向ける俺。其処には何時も存在して居るはずの紫の髪の毛を持つ少女は存在していなかった。
――それに、朝倉さんが俺に鎌を掛けるような真
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