虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・結の章
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っているホームレスにとっては十分だ。彼もまた空き缶を拾うことで辛うじて金を手に入れていた。
スチール缶は買い取りどころか引き取り料金を持って行かれる可能性があるが、アルミはスチールより希少な金属なので金になる。一缶でも多く手に入れたいホームレスにとっては立派なプレゼントだった。
ホームレスは鼻歌交じりに缶を回収した。
――そしてそのホームレスはそのアルミ缶で得た金で宝くじを買い、宝くじで4億円が当たり、人生の大逆転を決めた。その大逆転を決めるきっかけになったのが、謎の占い師だった。
「その金を使って宝くじを買いなさい。きっと貴方は幸運を得る。しかしその身銭は長く貴方の下に留まることはないでしょう」
「また貧乏になるってぇのか?」
「ありていに言えば。……ですが、そのお金をどのように失うかによって、その先が変わってまいりますれば」
占い師の風体は胡散臭かったが、その言葉には「信じてみてもいいかもしれない」と感じさせる不思議な耳触りで、彼はいつしかその占い師の話に聞き入ってしまった。
ただ持っているだけでは不運に持って行かれ、また無一文へ戻される。
だからこそ、得た金を体に溜まった厄とともに次々に放出してしまえ。
そうすれば出来た空きに幸運が舞い込んでくる。
――と、概ねそのような話だった。
最後まで聞いたホームレスは、暫く考えた後に「当たったら考える」といい残し、その場を去っていった。
占い師はそれを満足げに見送り、夕日が作る影に融けて消えた。
『これでいい。彼もまたゼノクライシスの引鉄になる』
『仏が隔てた3000の可能性を分断した壁。三千世界のほころびを作る』
『原初の世界は、ほころびを期に幾重にも枝分かれしていく』
『ある世界はこの後崩壊した文明に全く別の文化を築き、魔法を得るだろう』
『ある世界は実験の失敗にてこの星の様相を一変させ、その渦中で人類は新たな力を得るだろう』
『ある世界は、虚現と実現が反転し、ありもしない存在が実体化するだろう』
『だが、いずれほころびは仏に修繕される。それが輪廻の環。仏が加えたたった一つの補完者』
『私はその仏の奇跡とやらがどこまで通じているのかを、見極めたいだけだ』
占い師は、ある民家の台所の木陰から這い出るように再び現れる。
顔を隠すためのフードを取り外し、隠していた長い髪を軽く振ってひと息をついた。
演技をするのは嫌いではないが、女であることを隠さねばいけないのは面倒だ。
「あーあ……旧神としての力を使えれば変身くらい幾らでも出来るのに。まさか『千の無貌』の名を飾りにされるとは思わなかったわね……」
言うならば、それは気まぐれだった。
偶然女の姿をして日本にいる時に、偶然にも
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