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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 浸透
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帝国暦 488年  8月 27日  ヴァレンシュタイン艦隊旗艦 スクルド  ヘルマン・フォン・リューネブルク



「昨日はよく眠れましたかな?」
「駄目です、来客が多くて寝るのが遅くなりました」
そうだろうな、明らかに寝不足気味の顔をしている。
「それは御気の毒です、人気者は御辛いですな」
「人気者になる気は無かったのですけどね。今日も押しかけて来そうなのでここに逃げて来ました」
そう言うとヴァレンシュタインは指揮官席にゆったりと腰を下ろした。

「邪魔では有りませんか?」
「いいえ」
「では話をしても?」
ヴァレンシュタインが軽く笑みを浮かべた。
「構いません。遮音力場を展開しましょう、その方が良いでしょう」
フェルナー少将もオフレッサーも居ない。これは俺の一人占めだな。

「予想通りでしたな」
「そうですね」
ヴァレンシュタイン提督が頷いた。昨夜、ローエングラム侯が将兵達に演説をした。門閥貴族の横暴を訴え平民達の権利を確保する為には権力が必要だと訴えていた。辺境星域において焦土作戦を執ったのもそのためであり個人的な野心や出世欲からではないと。内乱終結後は平民達の権利を大幅に拡大する、リヒテンラーデ公もその事は了承している。動揺する事無く指揮官を信じて戦えと……。

それを聞いた貴族達がガイエスブルク要塞内に有るヴァレンシュタインの部屋に押し掛けた。小賢しい言い訳でローエングラム侯の真実は傲慢で冷酷な野心家でしかないと言って。あの男に鉄槌を下してやりたいと言って。そう言った貴族達の目はヴァレンシュタインを熱い眼で見ていた。自分でやれ、人を頼るな、全く何を考えているのか。

「しかしリヒテンラーデ公の名前を出すとは思いませんでした」
「自分の名前だけでは将兵を説得出来ないと考えたのかもしれません。或いはそこまで追い詰められたか……」
「予想以上に将兵の動揺が激しいと?」
“可能性は有るでしょう”と言ってヴァレンシュタインが頷いた。

「リヒテンラーデ公もローエングラム侯に倒れられては困る、渋々でしょうが同意したのでしょうね。どのみち内乱が終ればローエングラム侯を排除して反故にするでしょうし」
「とは言っても貴族達は不満たらたらでしょうな。平民達の権利の確保など貴族達への抑圧でしかない」
「リヒテンラーデ公に力が有る間は黙っています。しかしちょっとでも弱みを見せれば……」
「さて、どうなるか……」

皇帝暗殺を知りながらその相手と手を結んだ。本来なら許される行為ではない。それをした以上不満を持つ人間がそれを知ればクーデターという形での排除も有り得るか。いや、それだけではないな。もうすぐ辺境星域でも大会戦が起きる筈だ、それで敗北すれば……。リヒテンラーデ公を支えるローエングラム侯に貴族
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