漂流民―水相におけるイグニスからネメス―
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に死ぬよりも、希望を探す方を選んだのよ。だから旅に出たの。あなたが旅立たせたのでしょう? あなたが私を呼んだんでしょう?」
魔女は立っているだけだ。ウラルタに一切、興味を示さない。
「答えて!」
ウラルタは癇癪を起こした。
「答えてよ! 私は何の為に来たというの! 何故生きてここまで来たというの!」
ウラルタは魔女を凝視して、その右目の下の、右耳にかけて大きく裂けた傷に気付いた。自分の右目の下に手を当て、そこにある同じ傷を指でなぞってみた。
死者の頭の、ほとんど抜け落ちた、僅かに残っている毛髪が栗色で、自分の髪と同じ色である事に気付いた。
ウラルタは慄き、後ずさる。魔女の体が一瞬にして白い粒に覆われた。魔女は法衣ごと塩の塊となり、床に崩れ落ちた。
ウラルタは悲鳴を上げて部屋を飛び出した。
「何故!」
そのまま建物を出た。
「どうしてなの?」
青い空に尋ねた。
「ねえ、どうして!」
足の下に広がる陸地に尋ねた。
「私はどうすればいいの?」
遠い山並みに尋ねた。
「ねえ!」
青空は答えなかった。
陸は答えなかった。
山並みは答えなかった。
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