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駄目親父としっかり娘の珍道中
第67話 再生怪人が弱いと言う設定は割と通用しない場面もあったりする
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約完了だ……後は好きに使え」
「そ……その声! お前……まさか!」

 痛みで意識が朦朧とする銀時と、銀時の腹に突き刺さった刀を手離し、仮面の剣士は去ろうとする。

「うおぉぉぉぉぉ!」

 頭上から怒声が響いた。見上げると、エリザベスが持っていた刀を両手に持ち新八が飛び降りて来ていたのだ。
 渾身の一撃が仮面の剣士に襲い掛かる。咄嗟に避けた仮面の剣士だったが、新八の振るった剣の切っ先が仮面の剣士の顔を覆っていた仮面に当たる。その衝撃で顔を覆っていた仮面が弾き飛ばされてしまった。

「お前、よくも……よくも銀さんをぉ!」

 怒りに目が血走った新八が刀を構え、仮面の剣士を見入る。仮面がはぎ取られた為に剣士の素顔が月夜の光を受けて明らかになった。
 その素顔をみた新八の中で、一瞬時が止まるような感覚を感じた。
 そんな馬鹿な。その顔は、お前は―――
 驚愕の余り思考が停止し棒立ち状態となっていた新八の横腹に、剣士は強烈な回し蹴りを叩き込んだ。骨がきしむ音がする。悲痛の声をあげながら、新八は壁に叩き付けられてしまった。
 
「づ……」

 相当の衝撃を食らったのだろう。新八は腹部を抑えたまま身動きが取れない状態になっていた。そんな新八や銀時を尻目に、剣士は落ちていた仮面を拾い、再び顔に嵌める。

「骨は折れてはいまい。私を捉えた腕は評価するが、まだまだ練度が足りない。死にたくなければ戦場に首を突っ込まない事だな。少年よ」

 動けない新八に向かい、仮面の剣士は言葉を投げ掛ける。そして、それを言い終わるとその場から跳躍し、姿を眩ませてしまった。痛みが和らいだのを感じ、新八はよろよろと身を起こした。
 そして、銀時の元へと駆け寄る。

「銀さん、銀さん!」
「へへっ、ぱっつぁんよぉ……あいつに掠り傷つけるなんざぁ、やるじゃねぇか。見直した……ぜ―――」

 その一言を最後に、ガクリと銀時の首が項垂れた。幾ら新八が肩を揺らしても、一切反応を示さない。
 まるで、その体が死体となってしまったかの様に。

「嘘だ、嘘でしょ? 銀さん……銀さぁぁぁぁぁん!!!」

 月夜の照らす夜道に新八の悲鳴が響き渡る。だが、幾ら新八が悲痛の叫びを流そうとも、銀時がその身から赤い鮮血を垂れ流そうとも、月はただ闇夜を照らすだけであった。




     つづく
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