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戦国異伝
第百九十一話 水攻めその十三
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「おわかり頂けたでしょうか」
「それはまことでござるか」
 元春が信じられぬという顔で林兄弟に問うた。
「織田家に。その様な条件で入れとは」
「はい、その通りです」
「確かに石高は減らされますが」
 それでもだった。
「そこまでの条件での話とは」
「そちらに不都合があるでしょうか」
「いえ、不都合どころかです」
 毛利本家は四十万石として残り誰も腹を切らずそのまま織田家に入れてもらえるのだ、しかも安芸からも退かない。
 それならばとだ、元春は言うのだ。
「そこまでよいとは」
「無論官位もそのままです」
「あまりにもよ過ぎます」
 これが元春の言葉だった。
「信じられぬまでに」
「しかし殿はそう申されています」
「織田殿は」
「左様です」
 林通具が元春に話す。
「確かに」
「左様か」
「それで宜しいでしょうか」
 また言う通具だった。
「この条件で」
「願ってもない申し出」
 元就は腕を組みだ、林兄弟に考える顔で答えた。
「そこまでの条件ならば」
「和睦し織田家に入って頂けますか」
「是非共。しかしそれでも」
「信じられぬというのですな」
「これまで何度も干戈を交えた我等にそこまでのいい条件とは」
「しかし百二十万石まで減りです」
 そして、と言う通具だった。
「後の八十万石もそれぞれの家臣の方のものとなるので」
「我等に残るのは四十万だからか」
「それなりに厳しいとは思いますが」
「確かにな、しかし誰も腹を切らず高松城も助けてくれる」
「それならですか」
「うむ、よ過ぎる位じゃ」
 和睦の条件として、というのだ。
「信じられぬ位に」
「しかし殿は嘘は申されません」
 林は元就にこのことは強く言った。
「このことは絶対にです」
「ではか」
「はい、それでお返事は」
「嫌とは言えぬ」
 それだけのいい条件ならとだ、元就は答えた。
「これがわしの返事じゃ」
「それでは」
「我が毛利家はこれより織田家の家臣となる」
 はっきりとだ、元就は林兄弟に答えた。
「このことを誓おう」
「確かにですか」
「そうして頂けますか」
「わしは確かに謀を使う」
 このことを隠さなかった、ここでは。
 そしてだ、そのうえで言うのだ。
「しかしじゃ、この約はじゃ」
「決してですな」
「違えぬというのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「このこと厳島の神々と御仏に誓おう」
「厳島の、ですな」
「毛利殿が信じられている」
「その通りじゃ、それではな」
「はい、では」
「殿にその様にお伝えします」
 林兄弟もこう応えてだ、元就の言葉を受けた。こうして毛利家は織田家の家臣となり戦は終わった。信長も戻って来た林兄弟に話を聞いてだ。
 そうしてだ
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