第百九十一話 水攻めその十一
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覚悟を決めてだ、皆に言った。
「わしが千陣を務める、よいな」
「そして、ですか」
「織田の陣を破りますか」
「全ての力を注ぎ込んで」
「それしかないわ」
「こうならればな、よいな」
賭けに出ることにした、元就は己が死んでもと腹もくくっていた。そうしてそのことを言ってだ、全員でその乾坤一擲の賭けに向かおうとした。
しかしだ、その元就のところにだ。旗本の一人が来た。
「殿、織田からです」
「織田からとな」
「はい、話がしたいとのことです」
「話とな」
元就はそう聞いてまずは怪訝な顔になった。
そうしてだ、その顔でその旗本に問うたのだった。
「一体何じゃ」
「織田の使者が来てです」
「そうしてか」
「はい、殿とお話がしたいと言ってきています」
「ふむ、ここでか」
「それでどうされますか」
「織田家の使者は誰じゃ」
「林殿と弟君です」
この二人だというのだ。
「林通具殿も来ておられます」
「父上、林兄弟特に兄の通勝殿はです」
林兄弟と聞いてだ、隆景が元就に言って来た。
「織田家の中でも重臣、そして通勝殿は宿老と言っていいです」
「そうであるな」
「その織田家の宿老が来るとなると」
「相当なものじゃな」
「本気かと」
織田家も、というのだ。
「本気で我等と話がしたいかと」
「それではじゃな」
「この話、受けましょう」
「そうじゃな、それではな」
こう話してだ、そしてだった。
元就は話を持って来た旗本にだ、こう答えた。
「林殿にお伝えせよ」
「はい」
「本陣に来られよとな」
「それでは」
「まさかここで使者が来るとはな」
元就は旗本に告げてから考える顔で述べた。
「わからぬ。どういうつもりじゃ」
「降る様に言っているのでしょうか」
ここでだ、元春が乳に問うた。
「やはり」
「降伏か」
「はい、そうでは」
「それも有り得ると思いますか」
「降るとあってもな」
それでもだった、元就は難しい顔で言った。
「止むを得ぬな」
「しかし父上、降るとなりますと」
隆元も言って来た。
「その場合は」
「誰かが責を取らねばならぬな」
「はい、そうなります」
「責を取るのはわししかない」
元就だけだというのだ。
「そういうことじゃな」
「お言葉ですが」
「それで家が残るならよい」
ここでも覚悟を決めて言う元就だった。
「それでな」
「そう仰いますか」
「家を守ることが第一じゃ」
元就のこの考えは変わらなかった。
「だからじゃ」
「それで」
「うむ、そうじゃ」
まさにというにだ。
「そうなってもよい、後は頼むぞ」
「父上・・・・・・」
「そうされてもですか」
「毛利の家の為に」
「その為ならじゃ」
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