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蜻蛉が鷹に
第七章
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第七章

「喜んで」
「そうか。そう言ってくれるのだな」
「しかし。曲芸で、ですか」
「元々我が国のブルーインパルスはあちらさんを参考にしているからな」
「そうですね。それは」
 これはブルーインパルスだけではなかった。自衛隊全体がであった。自衛隊はアメリカの考えや形式がかなり取り入れられているのである。
「それでだ。共同でショーを行いだ」
「お互いに学び合うというのですね」
「そういうことだ。我々にとって得られるものは大きい」
「その通りです」
「ではだ」
 ここまで話してだ。司令は浜尾を見てまた告げた。
「頼んだぞ」
「はい」
 浜尾は敬礼で返した。その敬礼は海軍の折り畳んだものではなかった。空軍の、陸軍のそれと同じ広げたものであった。その敬礼で返したのだった。
 そうしてだった。ショーの日になった。そこにおいてであった。
「いよいよかあ」
「アメちゃんと一緒にやるのか」
「とはいってもアメちゃんが見せた後で俺達がやるのか」
「そうなるんだな」
「そうだ」
 その通りだと。浜尾は仲間達に話した。
「俺達が二番目だ」
「それって何か癪ですよね」
「そうですよね」
「ここは日本なのに」
「それは」
「仕方ないとは言いたくないがな」
 浜尾はだ。やはりこう言うのだった。
「どうしてもな」
「ですよね。負けたとはいえ」
「日本なんですから」
「やっぱり」
「そうだ。しかしだ」
 ここでだ。浜尾はその言葉を変えてきた。そうして言うのだった。
「負けはしないぞ」
「奴等以上の曲芸を見せますか」
「ここは」
「ああ、見せてやる」
 こうだ。強い声で言うのである。
「絶対ににな」
「ですよね。それじゃあ」
「出番が来ればですね」
「やりますか」
「やるぞ。絶対にな」
 こうしてだった。彼は決意したのだった。そしてだ。
「負けてたまるか」
 こうも言った。あの敗戦の時のことはだ。決して忘れてはいなかった。
 そしてだ。アメリカ軍のショーがはじまった。それは。
「おお、凄いな」
「ああ、あんなことできるんだ」
「天才じゃない?」
「だよねえ」
 こうだ。観客達の多くが唸った。見ればだ。
 彼等は赤や青や黄色の飛行機雲を出しながら飛びだ。宙返りに反転、それにチームワークを使った見事な操縦を見せていたのだ。
 そうしたものを見てだ。観客達は言うのだった。
「やっぱりアメリカ軍だよな」
「ああ、凄いよ」
「あんなこと自衛隊には無理だよな」
「絶対にな」
 彼等はアメリカ軍の方が凄いと思っていたのだ。日本を破ったアメリカ軍の方がだ。既に勝負ありだとだ。多くの者が確信していた。
 そうしてアメリカ軍のショーが終わった。その時は凄まじい歓声が場を支配した。

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