1.台風一過の如く《汐留 憂》
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起こした。
これが桜くんなら、真っ先に説教されているところだが、憂さんは大きめの瞳を見開き、不思議そうに私を見ている。
性格は似ていないのかも。
「えっ! あ、いや…スイマセン、憂さんがそんなにしゃべってるの、見たことなかったんで……思わず」
頬杖をつき、彼は窓の外を見つめている。
校庭は、サッカー部の男子が砂ぼこりをあげながら戦っていた。
時折、チームメイトの名前を呼ぶ声がこちらまで響いてくる。
「……そっか。あのさ、俺のことどう思う?」
……はい?
何の流れでそうなったんだ。
とりあえず、答えを見つけて応じる。
「えっと…あまり話したことないんでよくわからないですけど、……ちょっと可愛い、と思いました」
「……消えてほしいんだ」
私に?
話の文脈が、あまりにもなさすぎる。
戸惑う、というか、いきなりの台詞に若干傷ついた。
憂さんは、また腕に顔をうずめた。
何だか、すごくブルーになっているように見える。
「大嫌い………こんなの」
こんなの?
「あの、どういう…」
「この名前、憂って…憂いって書くじゃん。
悩みって意味なんだよね……名前の通りに生きてる。
こんなの、こんな奴、消えて…消えて…………」
「ちょっと、大丈夫ですか!? 憂さん!」
様子がおかしい。
そう思った私は、憂さんの肩を叩いた。
どこか調子が悪いんじゃ…。
肩を叩いたものの、返事がない。
「憂さん!? 大丈夫ですか!? 具合でもーーー」
必死に声をかけていると、図書室に誰かが入ってきた。
軽やかな足音。
それが、すぐそばで止まった。
「沙弥香さん、気にしないでください」
その声は、桜くんのものだ。
桜くんは、憂さんの髪をぐいっと引っ張った。
「おい、なに他の人に迷惑かけてんの」
「待って、桜くん! 憂さん、具合が良くないみたいーーー」
「黙って! 沙弥香さんは騙されてるんだ!」
……は?
固まる私の前で、桜くんはお兄さんの体を椅子に寄りかからせ、その頬をはたいた。
少し苦しげだった表情が、さらにつらそうになる。
「……ぅぅ………」
「おい、起きろ!」
これはDVとかではないのだろうか…。
と、憂さんが目を開いた。
モカブラウンの瞳が、桜くんを認める。
「……兄さん、帰るよ」
桜くんのぶっきら棒な言葉に、憂さんが投げやりに反応した。
「…はいはい」
あれ…。
先ほどとは打って変わって、憂さんの態度が…。
「沙弥香さん、ほんとに済みませんでした……この構ってちゃんが…。
この馬鹿兄にはすぐに帰ら
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