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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第三十七話 鏡、それは精霊ならざる者
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聞いた。
 でも俺の中に憐れみの感情は沸いてこない。沸いたのは、怒りだ。

 ――人を散々焚きつけたくせに腑抜けやがって。今さら弱いフリしたって許されると思うなよ。

 俺はヴィクトルの胸倉を掴んで無理やり立たせた。

「だからどうした。これは現実だ。ゲームみたいにエンドクレジットは出ちゃくれねえ。全部現実なんだよ! 例えユティとフェイが死んだんだとしても、俺もあんたもここで折れるわけにはいかねえ。そうだろ!?」
「アル、ヴィン」

 突き飛ばした。ヴィクトルは阿呆みたいにポカンとした顔で、それでも、また倒れることはなかった。まだ芯は残ってる。まだ火は消えてねえ。

「あれだけやって、まだこんなに生き残りがいたのね。しぶとい奴ら」

 上から降ってきた声。経験上、ろくなもんじゃねえって分かったから、とっさに銃を抜いて上に向けた。

 人が、浮かんでる。水色のマーメイドドレスに身を包んだ、空色から浅黄色へのグラデーションヘアの、パッと見、豪奢な女だ。
 いや、混乱するな、俺。空中浮遊なんてフェイがやるの散々見てきただろうが!

「お前、大精霊か」
「そうよ。初めまして、ミラ。私はミュゼ。貴女の姉です」
「姉、だと? 私にそんな者は」
「いない? ふふ。それは貴女が知らなかっただけの話。私は貴女より先にこの世に生を享けた、貴女の、この世でたった一人の家族」

 ミラは眼光鋭く、ミュゼと名乗った女精霊を見上げてる。

「おいマクスウェルさんよ、あの女の話、マジか」
「私は知らぬ」

 ミラは一歩前に出て、強くミュゼを睨み上げた。

「お前が私の姉妹だと言うなら、私の使命も知っているはずだ。我が使命はリーゼ・マクシアの守護。何故その邪魔をした」
「使命?」

 きょと、と水色の精霊は首を傾げ、急にころころと笑い出した。

「おっかしい! 貴女はアルクノアみたいな連中を誘き出すために用意された、エ・サ♪ 使命感や正義感なんて、貴女には無意味なものなの。それなのに頑張っちゃって」
「私が……?」

 ミラはバラ色の目を見開いて小さく震え始める。
 この反応……まさかミラ本人も知らなかったのか?

「ミラ様っ、しっかりなさってください! ミラ様!」
「っ――触るなッ!!」

 ミラがイバルを突き飛ばした。イバルは受身も取れずに近くの壁に背中をぶつけた。

断界殻(シェル)を守る使命と、死へ向かう行動の矛盾。それにさえ気づかずにいたなんて、貴女も本当に頭の悪い子ねえ、ミラ? 姉さん、悲しいわ。せっかくマクスウェル様が下さった妹を」

 水色の精霊の手に黒い磁力の球。
 こいつ、だったのか。ジルニトラごと俺たちを沈めようとしたのは!

「殺さなくちゃいけないなんて」

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