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乱世の確率事象改変
裏切りの明け空
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本初に所縁の親族と袁家の上層部でも夕と敵対していた者達を……皆殺すのがよいかと。赤子から老人に至るまで、華琳様に歯向かうとどうなるかを大陸の全てに示す事こそが、この戦の結末で得られる最大の利益」

 ふ、と浅い息が漏れ出る。嘲笑か、それとも自嘲か……不敵な笑みの意味は、桂花には分かり得ない。

「そう……あなたが辿り着いた答えは其処か」

 不思議な声音であった。桂花は普段とは違う主の雰囲気に疑問が浮かぶ。
 華琳の為に粉骨砕身、親友の命でさえ賭けた桂花でこそ辿り着けた答え。他のどの軍師も、其処までするとは考えていない。
 まさか間違いなのかと、鼓動が跳ねた。
 虐殺、という非情な手段を提案したのに、華琳はなんら気にも留めていないのだ。
 心が痛むか、と言われれば桂花はあまり痛まない。
 新鮮なリンゴが詰められた箱、その中にある腐ったリンゴと同じく、もはや袁家は大陸の毒。切り捨ててしまう他ないし、桂花としても憎しみが多分に含まれている。利を判断した上で感情を乗せていると言えようか。
 倫理的には恐ろしい事だが、もはや桂花は覇王の王佐。ましてやあの部隊にこの二月程触れてきたのも功を奏してか、この程度では動じなくなった。
 戦に勝利した上で袁の虐殺を行えば、今噂されているモノも含めて曹孟徳の名は善悪構う事なく語られる。誰かは蔑み恐怖する。しかして弱きモノ達は……彼女の下で生きるのならば殺されないと認識を置く。結果として善政が齎されている以上は“戦乱に関わりたく無い者達”にとっての逃げ場と為せる。そうした上で華琳の定めた規律と法に縛られ、世界はより良く動き出すのだ。
 そして一番大切な事は……華琳に敵対するモノ達の中でも、より大きな力を持つモノ達に対しての線引き。
 言うなれば、華琳は他の勢力に対して大々的な宣戦布告をしようとしているのだ。

 袁の二の舞になるか否か、この曹孟徳に従うか否か。

 各勢力の主達は平穏無事に過ごしたいなら降るべきで、この時を置いて他にはない。それが出来ないなら殴りに行かせて貰おう……莫大な犠牲はその意味を強制的に伝えるであろう。
 話合いを持つ気などさらさら無いのだ。
 只々頭を垂れろと脅しかけるだけ。従わなければ殴る、それだけ。
 漢という大国が作った平穏は、こうして華琳の手によって壊される。

「そ、その……違っていたでしょうか?」
「いいえ、あなたの献策は正しい。私のしようとしている事と一致してる」

 なんのことはないと、虐殺を行う事の一つとして是と為す華琳。ではあっても、煮え切らない返事に桂花は眉を一層に顰めた。

「なぜ……」

――そのような声で、私の思い至らないナニカを浮かべていらっしゃるのですか……。

 咄嗟に呑み込んだ。自分でも何故そうしたのか分
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