第138話 蔡瑁
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わざ蔡一族の本拠地である襄陽に州都を移すのは我ら一族の力が政の運営上不可欠だからだ」
蔡瑁は嫌らしい笑みを浮かべ張允を凝視した。張允は蔡瑁の告白に剣呑な様子だった。
「秋佳、劉ヨウの使者は丁重に持てなし、明日豪勢な土産を持たせて帰っていただけ」
張允は蔡瑁の言葉に肩を固まらせた。
「それは」
「言葉の通りの意味だ。お前はただ使者をもてなせばいい。お前に倫陽のような真似などできんだろ。劉ヨウの影に怯えるお前にはな」
蔡瑁は張允を眉間にしわを寄せなじるように言った。
「叔母上、劉叔母上には?」
張允は蔡瑁のなじりは無視して言った。
「言わなくてもいい。面倒臭いことになるだけだ。劉義姉上はここぞと言う時に二の足を踏む方だ。相談するまでもない。問題は劉ヨウと袁術だ。奴は今回の件を利用し、この私を脅してくるやもしれない。私なら間違いなく利用する」
蔡瑁は渋面で虚空を睨みつけた。
「では劉ヨウに恭順する振りを見せれば」
「秋佳、お前は馬鹿か?」
蔡瑁は険しい表情で張允を睨みつけた。
「お前の言う通りにしたらどこまでも利用され使い潰されるだけだ」
「ではどうするというのです?」
蔡瑁は張允の言葉に口角を上げ邪悪な笑みを浮かべた。
「劉ヨウを先に殺す。冀州へ帰られてはもう二度と手がだせん。奴が荊州にいる間にけりをつける」
「叔母上、正気ですか!? まだ劉ヨウを殺そうとお考えとは正気とは思えません。劉ヨウは車騎将軍である前に王の爵位にあるものです。ことが露見すれば朝廷も黙っていないはず。劉叔母上とてただではすみません。最悪、九族誅殺の憂き目にあいますぞ」
張允は蔡瑁に狼狽しながら不安げに言った。それを蔡瑁は蔑みに満ちた表情で一瞥した。
「殺さねば、いずれ我らが殺されることになる。お前は分かっているのか! ことが済めば劉ヨウは賊に殺されたことにでもすればいいのだ」
蔡瑁は張允を叱りつけた。
「ですが、あまりに軽挙すぎます」
「黙れ! いかに劉ヨウが武芸に秀でいようと所詮は人。殺しようはいかようにでもある。人など条件が揃えば容易く死ぬのだ。袁術の件は誤算があっただけのこと。秋佳、お前は劉ヨウの使者から奴がいつまで荊州に滞在するか聞き出せ」
蔡瑁は落ち着いた声音であったが、その表情は怒りと緊張がない混ぜになっていた。張允は叔母である蔡瑁の様子に不安を覚えていた。しかし、蔡瑁の張允への態度から彼女に拒否権はないだろう。
「叔母上、劉ヨウを殺すのは倫陽の復讐でしょうか?」
張允は蔡瑁に真剣な表情で質問した。張允は蔡瑁が復讐に燃え感情的に正宗を殺そうとしようとしているのでないかと考えていた。もし、張允の読み通りなら蔡瑁は冷静さを失い
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