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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第138話 蔡瑁
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遣いいただきありがとうございます」

 泉は手を叩くと部屋の扉が開き泉の配下の兵が漆塗りの箱十八箱を部屋の中に運びこんできた。箱は蔡瑁の前に綺麗に陳列された。箱は見事な漆塗りで蔡瑁は目を見張った。彼女はある一つの箱で目が止まった。一つの箱だけ朱漆の箱で、残りは黒漆の箱だったからだ。朱漆の箱を凝視する蔡瑁を見て泉は口を開いた。

「その箱の中身は正宗様が賞賛した人物の一部でございます」
「賞賛した人物の一部?」

 蔡瑁は泉の言葉に容量を得ない表情を返した。

「はい。その箱の中の人物は忠義と勇気を兼ね備えた人物でした。正宗様はその人物の才を惜しみ、降伏を条件に助命を考えましたが頑なに拒否しました。私も敵ながら天晴れの態度と思いました」

 泉は真剣な面持ちで蔡瑁を見据えた。泉の言葉に蔡瑁は箱を凝視して顔を青くさせていた。

「満白寧殿、誠に申し訳ないが叔母上は体調がすぐれない。本日の面会はこれにて終いにしていただきたい。長旅の疲れを当屋敷してとっていただきたい。面会の続きは日を改め設けさせてもらいます」

 張允は泉の言葉と蔡瑁の表情の変化を見て、二人の間に割り込んできた。だが蔡瑁は手で張允を静止した。蔡瑁は小刻みに震える手で朱漆の箱の蓋を開けた。その箱の中身を見た蔡瑁は両膝をつき態勢を崩し、箱の蓋を落とした。その様子を見て張允も咄嗟に蔡瑁に駆け寄り箱の中を見て凍りついていた。

 朱漆の箱には正宗に降伏することを拒否した女の首が安置されていた。その首の顔は死化粧を施され、髪は綺麗に整えられていた。そして、女の表情は少しも乱れておらず安らかものだった。蔡瑁は首を見て完全に動揺した表情を浮かべていた。

「倫陽……」

 蔡瑁は震える手で箱に触れ、その中身を凝視していた。その瞳は驚愕で見開かれ焦点が合っていなかった。

「おや蔡徳珪殿のお知り合いでございましたか?」

 泉は動揺する蔡瑁に言った。しばし、蔡瑁を凝視した後、徐に口を開いた。

「戦況不利になろうと臆さずに果敢に挑んでくる様を主は褒めておいででした。己の命惜しさに主君を裏切ることなく死を選んだ行為、百の臣下に勝る。違う出会い方をしていれば家臣として迎えたかったと」

 泉の言葉を蔡瑁は黙って聞いいていたが、彼女の両手は震えていた。張允は泉を険しい表情で睨んだ。しかし、泉は張允の睨みに動ずることはなかった。

「この者は誰が討ちとったのですか?」
「叔母上!?」

 張允は蔡瑁の言葉に驚く。

「主御自らです」

 泉は短く言った。蔡瑁は顔を上げることなく朱漆の箱の中に安置された蔡勲の顔を凝視し続けていた。

「使者殿、劉車騎将軍の此度の用向きは挨拶のみでございますか?」
「はい、主人は蔡瑁殿に一度挨拶をしておきたいと
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