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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第138話 蔡瑁
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州牧 清河王 劉正礼

???



 と書かれていた。

倫陽(りんよう)は」
「言うな!」

 蔡瑁は厳しい表情で張允を睨みつけた。その剣幕に張允は押し黙った。

「しばし一人にしてくれ。二刻後に出向く」

 蔡瑁は張允と目を合わせず顔を沈めたまま言った。張允からは蔡瑁の表情を伺いしることはできなかった。張允は蔡瑁を置いて使者の元に出向いて言った。張允が去ると同時に蔡瑁の膝のあたりの服に雫が一つ二つと染みを作っていった。

「倫陽、済まぬ」

 蔡瑁は嗚咽し、声を震えていた。彼女の哀しみに満ちた心中とは裏腹に庭の植えられた木々は陽光を浴び青々としていた。

「愚姉を許しておくれ。私の力になりたいのであれば他にもいくらでも方法はあった。汚れ仕事はこの私に任せておけば良かったのだ。この私の手は十分に汚れているのだから」

 蔡瑁は亡き妹に懺悔するように独白していた。しかし、彼女の懺悔を聞く者は誰一人とていない。それを聞くのは手入れの行き届いた庭の木々だけだった。

「袁術配下の武官は驚異できないと高をくくっていた。警備の薄い時を狙えば、袁術を亡き者にするなど容易いと考えていた。こんなことになるとは」

 蔡瑁は嗚咽を漏らしながら顔を両手で覆った。



 蔡瑁は張允に告げた通り二刻後広間に現れてきた。蔡瑁は張允と会話していた時と違い華美さを抑えた上品な紫色の上絹で設えたチャイナドレスに身を包んでいた。この部屋には邸宅の主人・蔡瑁、張允。そして正宗の使者である泉の三人だけがいた。部屋に入ってきた蔡瑁は笑顔で泉に対し歓迎の言葉を述べた。その様子に張允は一瞬驚いた表情をするも直ぐに平静さを取り戻した。張允は歓迎を示すでもなく事務的に泉と接した。蔡瑁と張允の態度は対照的であった。

「満白寧殿、劉車騎将軍も荊州にこられて直ぐに災難でございましたな。袁南陽郡太守はご無事で何よりにございました。謹んでお見舞いの言葉を述べさせていただきます」

 蔡瑁は心配そうな憂いを帯びた表情で泉に対して正宗と美羽の不幸を労わる言葉を述べた。泉は拱手して感謝の意を示した。

「して。満白寧殿、襄陽にはどの程度逗留されますかな。よろしければ当家にて歓迎の宴を用意したいと思っております」
「蔡徳珪殿、お気持ち感謝したします。袁太守様の件がございますれば用向きが終わり次第戻ろうと思っておりました。ですが、折角の蔡徳珪殿のお誘い。喜んで参加させていただきたく存じます」
「それは重畳」

 蔡瑁は泉の返事に笑みを浮かべた。泉は何か思い出したような表情をして蔡瑁に対して拱手をした。

「蔡徳珪殿に喜んでいただけるか心配でございますが主より土産を預かっております。お納めください」
「土産ですかな? わざわざお気
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