第138話 蔡瑁
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ろしければ私が代理で面会しますが。それか日を改められてはどうです。使者には失礼ないよう手配しておきます」
「大丈夫だ。相手に弱みを見せる訳にはいかない。ここで動揺した行動をとっては、相手に私が袁術襲撃の黒幕と打ち明けるようになものだ」
「叔母上、考えすぎです。気付かれてはいないでしょう。土産を持参してきていますし」
「この時期にどうして私の元に使者を送ってくる。私は劉ヨウとは面識もないぞ。怪しすぎる。遠路冀州よりわざわざ義従妹の元を訪ねる男なのだぞ。袁術の心配で私に使者を送る心境ではあるまい。あまりに不自然すぎる。袁術の暗殺襲撃の黒幕が私であると疑ぐっているのではないか?」
蔡瑁は厳しい表情で文箱を凝視していた。
「その箱の文を読んでみてはいかがです?」
張允は蔡瑁に文箱の中を確認するように促した。
「仮にばれていたとしても土産を持ってきているくらいですから大丈夫でしょう」
張允は楽観的な態度で蔡瑁に言った。
「土産を持ってきたと言ったな」
「はい」
蔡瑁は張允の言葉に反応し、張允の方を向き訝しむ。自分の義従妹を暗殺しようとした人間に土産など持ってくるはずがない。だが蔡瑁は引っかかっているようだった。正宗の使者の到着時期からして、袁術の暗殺襲撃時期から少ししてである。混乱が収まらない状態で面識もない面会の予約もしていない相手を訪ねるだろうかと蔡瑁は考えていた。あるとすれば正宗が蔡瑁を袁術暗殺の黒幕と睨んでいる場合の可能性が高い。しかし、黒幕と疑う相手に土産を持参するだろうか。それはないと蔡瑁は確信していた。
蔡瑁は何かあると思った。そして、彼女は悪い予感がしていた。未だ戻らない実妹。蔡瑁は台の上に置いた文箱に視線を向けると乱暴に封を開け、中にある文を開封して読み出した。彼女が読み終えると文を握る手は震えていた。
「どうされたのです?」
蔡瑁は何も言わず文を張允に渡した。張允は蔡瑁から渡された文を読み動きを止めた。文には
???
蔡徳珪殿
はじめまして。
私自ら出向くことができず申し訳ない。
荊州の名門である蔡一族の蔡徳珪殿には以前からお会いしたいと思っていた。
しかし、それも叶わなくなった。
先日、義従妹である袁南陽郡太守が凶賊に襲撃される事件が起こった。
幸いなことに襲撃当日に凶賊は全員討ち取ることができたが凶賊の黒幕がようとしれない。
凶賊は末端まで凶賊とは思えぬ練度であった。
到底看過できることではない。
凶賊の件もありしばらく南陽郡に出向けそうにないため挨拶として使者のみを送らせてもらう。
使者に預けた土産の品だが気にっていただければ幸いだ。
機会があれば是非に蔡徳珪殿とお会いしたい。
車騎将軍兼冀
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