漂流民―水相におけるイグニスからネメス―
―3―
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
き上がり、壁伝いに歩いて建物から出て行こうとする。
「一夜にして滅んだネメスの民は、皆体から塩を噴いて死んでいたという」
女は無愛想に見物人に答えた。
「その記憶だろう。亡霊は屍という器がある限り、私がかけた術の残滓につき動かされ、ネメスに帰ろうとする筈だ。うまくいくかどうかは、わからんがな」
ウラルタはぐっと奥歯を噛みしめて、死体の後を追った。死体は既に建物を出ていた。ひどい雨だった。強風に弄ばれながら、右によろめき、左によろめき、明かりのない細い道へ消えて行く。ウラルタも同じようによろめきながらついて行った。
やがて細い水路に出た。死体は繋ぎ止められていた小舟に乗りロープを外す。ウラルタも町の床を蹴って、同じ小舟に乗った。
小舟は雨と風に押し出されて、タイタスの水路を夕闇が濃くなる方へ突き進む。
ウラルタは後ろを振り向いた。
町の灯が、雨の膜の向こうに、既に遥かに遠い。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ