第07話 逆襲のサバキ
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に対する薬を開発したりしているの。
あなたもそのことは知ってるでしょ?」
彼女の言う通り、セキレイはそのことを知っていた。
「彼はあなたの“カゲロウ病”も治したんだから」
ー“カゲロウ病”とは――――――――
初期症状は軽い腹痛と食欲不振という程度で気付きにくい。
重症化すると食道の収縮によって食べ物を全く受け付けずに
先の栄養失調と相まって2、3日で息絶えてしまうという原因不明の奇病であった。
食道やその付近の器官を調べられたが、真実は謎のままだった。
後に、脳から特殊なホルモンを分泌させる菌が発見され
それが食道に直接作用し、退化させているということが結論付けられた。
“カゲロウ菌”を繊細な脳内から全滅させるための薬を合成した戦国博士は
世界中で感謝の言葉を投げかけられたという。
セキレイも重症患者の一人だったが、施設に保護されて治療後
驚異的なスピードで回復し、そのまま収容された。
「‥‥‥‥あぁ、それについては感謝してるよ」
セキレイは少し微笑んだ。彼は昔の思い出に浸っていた。
あの優しかった博士がここまで冷酷な男だったとは。
あの時のショックは今でも忘れてはいない。
「それでも、アイツの性格を知った上で
死んでも守りたい奴だとはおれは思わない」
彼は静かにそう言った。
「どう思おうが、俺たちの勝手だろ」
突然、後ろから声が聞こえてきた。しかも、ごく最近聞いた覚えがあった。
後ろにいた男は宙を舞い、セキレイたちの前に着地した。
「お、お前ッ!!」
彼はついさっきセキレイがロープでグルグル巻きにされていた男だった。
今まで男はただ座り込んで待っていたわけではなく
仕込んでいたナイフでロープを切り、彼らの後を追いかけたのだ。
「サバキッ!!」
全員の前に立ちふさがる男の名前をセキレイは叫んだ。
そこに立っていたのはあの憎たらしい男、サバキだった。
しかし、先程とは違い変身した状態で現れていた。
独特な模様の羽、鱗粉、毛、羽毛状の触覚、誰が見ても蛾である。
「俺の攻撃は喰らえば終わりだぜ」
ブワッ!
そう言って羽ばたくと鱗粉が舞った。全員は急いで口元を押さえた。
鱗粉で視界が非常に悪くなっていた。
「な、ここまで濃い鱗粉だとは」
セキレイはわずかに目を開いたまま言った。
彼は両手の翼を少し広げて大きく羽ばたかせた。
ビュオオッ!!
全員を覆っていた鱗粉は吹き飛んで、視界が大分開けた。
「極力喰らわない方がいいぜ?」
サバキは意味深な一言を発した。その理由はすぐに表れた。
「い、痛、手が痛い、お兄ちゃん」
ハトは手を押さえていた。
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