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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十四話 毒
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…リヒテンラーデ公、グリューネワルト伯爵夫人、フロイライン・マリーンドルフ、あの三人はもう終わりだ。いずれオーディンでは血で血を洗う様な凄惨な政争が始まるだろう。あの三人はまず生き残れない」
「……」
どうにもならない、俺もそう思う、どうにもならないと。そして生き残れないと。

「あの三人が抱えている秘密は誰にも相談出来ない。公になればその瞬間から全てが崩壊する。伯爵夫人があそこで私を止めたのも私が全てを暴露すると恐れたからだろう。だが私は彼女が懺悔するのではないかと思った。そうなればとんでもない混乱になったはずだ。ローエングラム侯は自暴自棄になってこっちを攻撃する可能性も有った。震え上がったよ、もう駄目かと思った。心臓を鷲掴みされたかと思うほどの恐怖を感じた……」
なるほど、エーリッヒが崩れ落ちるほど疲労したのはそれの所為か。グリューネワルト伯爵夫人の制止は助けではなく恐怖だったか。

「あの三人は、いやオーベルシュタインを入れれば四人だが事が公表されれば彼らは終わりだ。だがローエングラム侯は彼らを切り捨てれば生き残る可能性は有る。しかし侯に伯爵夫人が切り捨てられるか……、難しいな。多分その時は苦しんでいる侯を見かねて伯爵夫人は自ら命を絶つだろう」
エーリッヒの言葉に皆が頷いた。

「だがそうなればローエングラム侯とジークフリード・キルヒアイスは帝国の覇権を得るためではなく復讐のためにだけに生きる事を選ぶ筈だ。復讐鬼の誕生だよ、ウンザリだな……」
エーリッヒが溜息を吐いた。



帝国暦 488年  8月 25日  アルテナ星域 ヴァレンシュタイン艦隊旗艦 スクルド  エルネスト・メックリンガー



ガイエスブルク要塞を目前にしてヴァレンシュタイン提督から人質の解放が伝えられた。そして小型の連絡艇で受け取りに来て欲しいと。私と副官のザイフェルト中尉、他に五名の兵を連れてスクルドに向かった。スクルドからは中に入るのは私だけにして欲しいと連絡が有った。

ザイフェルト中尉を始め皆が危険だと言ったが宥めてスクルドには一人で向かった。出迎えはフェルナー少将と数人の兵士だけだった。リヒテンラーデ侯達人質は居ない。はて、騙されたか?
「フェルナー少将、人質は?」

幾分声がきつくなったかもしれない。それに気付いたのだろう、少将は苦笑を浮かべながら兵達に人質を連れてくるようにと命じた。兵達の姿が見えなくなるとフェルナー少将が近寄ってきた。そして“これを”と言って掌を差し出す。掌にはチップが乗っていた。

「これは?」
掌を見ながら訊ねた。簡単には受け取れない、危険だ。
「真実」
「真実?」
フェルナー少将が頷く。
「謀略では有りません。いや謀略と取られても仕方がない。しかし知らなければさらに危険です」

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