第四章
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「海軍!?」
皆それを聞いて顔を顰めさせた。
「陸軍でも空軍でもなかいのか」
「そうさ。ええと、確か」
ヘンドリックはここで記憶を辿った。それから述べた。
「デーニッツ海軍元帥だったな。あの人が言ってるらしい」
「誰だった?その人」
シュトラウスはその名を聞いてもどうもピンとこなかった。自分のいる組織以外のことは人間は案外知らないものだ。だからこれは致し方のないことであった。
「さあ」
アルトマンもブラウベルグも知らない。彼等も海軍のことは知らないのだ。陸軍のことはよく協同作戦をとるのである程度知ってはいたが。なおドイツは政治的な理由と思想的な理由で陸軍と空軍の関係は決していいものではなかった。これはナチスのナンバーツーであるゲーリングが率いる空軍が何かとヒトラーの覚えめでたかったのに対して伝統的なプロイセン軍の精神を持つ陸軍がその介入を嫌ったからである。陸軍は陸軍で名将知将を多く擁しておりヒトラーもその能力を認めていた。だがここでヒトラーが恐るべき政治家である理由はその陸軍と空軍をあえて対立させそれを自身の政権運営や戦略の進め方に利用したことである。ヒトラーという人物は軍事的には大いに問題のある人物であったが少なくとも政治家としては悪魔的に頭の切れる人物であり続けた。そのカリスマ性と比類なき統率力、常人のそれを遥かに凌駕する知性と記憶力もあり彼は英雄となったのである。やはり彼は恐るべき人物であったのだ。
「海軍長官だろ」
ハイトゥングが言った。もうジョッキは空で別のジョッキに手をかけている。
「確か潜水艦艦隊の指揮官で」
「ああ、その通りさ」
ヘンドリックは彼の問いにそう答えた。
「その人だ」
「その人が言ってるのか」
「総統にもそう言ってるらしい。それで総統もそれを認められてるそうだ」
「へえ」
アルトマン達はそれを聞いて意外といった顔になった。
「凄い人みたいだな、また」
「別にその人は最初からナチスにいたわけじゃないんだろ?」
「それでもな。総統も元帥をかなり信頼されてるって話だ」
ヘンドリックはアルトマンとシュトラウスにこう答えた。
「一人でも多く西に逃がすべきだってな。それで今陸軍は必死に戦ってるんだ」
「そうか、陸軍もか」
「だから俺達も出ることになるぜ」
ヘンドリックは述べた。
「じきにな。それで」
「ああ、それで多分最後だろうな」
アルトマンは暗い顔で述べた。
「もう燃料も弾薬もないしな」
「最後の全力出撃か」
「そうさ、用意はいいな」
ヘンドリックはシュトラウスとハイトゥングに声をかけた。
「全力でいくことになるぜ」
「それが最後の大暴れか」
ブラウベルグはその言葉を聞いて面白そうに述べた。
「ああ、そうだろうな」
「じゃあ精々派手に暴れ
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